Bellen

ニュー・シネマ・パラダイスのBellenのレビュー・感想・評価

4.2
●人生の節目節目で何度か見直したい映画。ノスタルジー漂う古き良きイタリア映画。

●少年時代のサルヴァトーレ(「トト」)が、小さな映画館で、映画技師のアルフレードと交流を重ねながら、映画技師の技法を身につけていく。

●年月が過ぎ、青年となったトトは、エレナという美女(本当にびっくりするくらいの美人女優)と出会い、惹かれ、雨の日も雷の日も愚直にアプローチをする姿を見せ、ようやく恋にいたる。そして、ある日、その恋は急に終えてしまう(終了後の唯一の不満はこの恋の終わり方だったが、なにやら『完全版』では、その続きとなる再会シーンがあるらしく、必ず見たいと思う)。

●そんなトトをみたアルフレードは、「二度とこの町に帰ってくるな」と言い放ち、町から追い出してしまう。

●そして、時代は「現在」。小さい町を出て30年、アルフレードの教えを守り、1度も故郷に帰らず、トトは有名映画監督になり、アルフレードの訃報を母親から聞きつけて、帰郷する。

●町は変り果て、物語の中心舞台だったニュー・シネマ・パラダイスも目の前で解体されてしまう。

●はっきり言って、大きな見せ場となるようなシーンもなく、ところどころ回収されていないような粗雑さがあるような気もするが、なぜか、観終わった後にとても温かい気持ちになり、余韻に浸れる不思議な映画。

●自分に1番響いたのは、やはりアルフレードとの師弟愛。あるいは、若くして父親と死別したトトにとっては、疑似的な親子愛ともいえる。アルフレードは、火事で視力を失ったものの、トトに命を救われた。数少ない親友だったトトの将来をひたむきに考えた結果、トトを町から追い出し、その後、ついに逝くまでトトとは会えなかった。アルフレードの奥さんは、「最後までトトの話をしていた」と言いながら、形見をトトに渡す。それは映画フィルム。

●トト少年時、映画館は教会と兼ねており、神父の強い意向で、町の人たちはキスシーン以上のポルノを一切観られなかった。映画技師の仕事の1つに、そのフィルムのカットがある。少年トトは、アルフレードと何度も交渉し、ついに切り取られたフィルムを手に入れる。しかし、アルフレードは、「これはお前のものだ。ただし俺が保管する」と訳の分からないことを言う。この序盤のシーンの言葉を、形見となるまでしっかりと守り続けたところにもまた、深い師弟関係を感じるのである。

●最後に、あらゆるシーンで後ろに流れている音楽が、なんとも哀愁漂う音色であり、この映画のノスタルジー感を最大限高めていることも加点ポイント。
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