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ニュー・シネマ・パラダイスのyuiのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

過ぎ行く人と人生、移りゆく時間の儚さと、過ぎ去ったものたちへの限りなく悲しみに近い愛情、ノスタルジーを心に残す美しい作品。

映画という娯楽の隆盛と衰退の果てに、役目を終えた楽園が見守られながら崩れゆく姿が切なく、過ぎ去った時の愛しさを想った。

例えば同じ靴を一生履き続けられるはずがないように、我々が生き続けるならば古いものは捨て、全く新しいものを手に入れなければならない。
人の人生は移り変わり、時代も、生活も、娯楽も、何もかもが変化し、古いものは失われゆく。そんな儚い人生の空虚のなかで、忘れられない思い出の一瞬、一瞬を大切にフィルムに焼き付けて、たとえ愛しいものたちに別れを告げてでも、前に進んで行かなければならない、それが生きるということなのだ。
そして、愛だけは不変の力を持ち、いつまでも自分を導き続ける人生の灯台だ。

愛の一瞬に言葉はいらず、だからこそ人は互いの口を塞ぎ合うのだろう。
決してそらすことなく、人と人が愛し合う喜びをその目で見て欲しいという想いはトトに伝わり、スクリーンを見る彼の表情に思わず涙が浮かんだ。
たしかに、言葉を使わずに自分の想いを伝えてみせたアルフレードの愛。

99日目を迎えた兵士はきっと思ったのだろう、
この愛を失っては生きてゆけないと。
いつだって愛は灯火だから。
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