よしかつ

ニュー・シネマ・パラダイスのよしかつのレビュー・感想・評価

4.8
〜ここにいると、自分が世界の中心だと感じる。何もかも不変だと感じる。だがここを出て2年もすると、何もかも変わっている。頼りの糸が切れる。会いたい人もいなくなってしまう。一度村を出たら、長い年月帰るな。年月を経て帰郷すれば、友達や懐かしい土地に再会出来る。今のお前には無理だ!お前は私より盲目だ〜

◆ようやく劇場で鑑賞できた、不朽の名作。
 溢れんばかりの映画への愛情、郷愁の詰まった作品。
 鑑賞時点の鑑賞者の年齢、家族構成、立場に応じて新しい視点、気づきを与えてくれる。

◆この映画は、「アルフレードとトトの年齢と時間軸を超えた友情の物語」。
アルフレード目線での「トトの成功を祈る気持ち」、
トト目線での「成功のために村での生活を捨てたことへの郷愁」が交錯する様は、見ていて心をわしづかみにされる。

トトの幼少期の母親のセリフ「この子が話すのは映画とあなたのことばかり」、
アルフレードの死後の妻のセリフ「生前はあなたのことばかり話していた」
という本人たちをとりまく登場人物からのセリフから、それぞれの思いが分かる点がよい。
直接的に気持ちを語るのではなく、周囲のセリフから、それぞれの感情を表現している点で見事だと感じる。

◆村の映写技師という技術の進歩とともになくなりうる仕事ではなく、より多くの影響を持つ道へと歩ませるために、アルフレードはトトをローマへ送り出すシーンには胸を打たれる。
「もう戻ってくるな。お前とは話したくない。お前のうわさを聞きたい」と。
応援するとはどういうことなのか、を考えさせられる。

◆映画監督としての成功の反面で、村の人々との時間を捨てたトトだが、30年ぶりに戻る故郷で老いてるものの人々の姿や内面など本質的な部分は変わっていないことに気づくシーンからは、強烈なノスタルジーを感じる。
時間の経過により変わるものと変わらないものを見せつけられる。

◆ラストシーン(アルフレード遺品のキスシーンフィルムの再生)では、幼少期のアルフレードとトトの約束が果たされる。
盲目のアルフレードが、フィルムの一欠片一欠片を大切につなぎ合わせ、大切に保管していた姿が目に浮かぶ。
本心ではトトに会いたい気持ちもあるだろうに、トトの成功を祈る姿。

◆アルフレードのことば
「アブラカタブラ」
映写技師として人々に笑顔を届けた魔法。映写機の光を外に反射させて広場の人々に映画を届けた

「王宮の兵士の寓話」
99日目にして王女の家を去る兵士の寓話。

「自分のすることを愛せ。子供の時、映写室を愛したように」

「お前の噂を聞きたい」
よしかつ

よしかつ