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真夜中のパーティーの一人旅のレビュー・感想・評価

真夜中のパーティー(1970年製作の映画)
5.0
TSUTAYA発掘良品よりレンタル。
ウィリアム・フリードキン監督作。

ニューヨークを舞台に、友人の誕生日パーティーに集ったゲイたちの姿を描いた群像ドラマ。

『フレンチ・コネクション』(1971)『エクソシスト』(1973)『クルージング』(1979)のウィリアム・フリードキン監督初期の群像ドラマの傑作。自身もゲイであると公言している劇作家マート・クロウリー原作によるオフ・ブロードウェイの舞台劇を映像化した作品です。

舞台劇を基にした群像ドラマなので、ニューヨークのアパートの一室(バルコニー付)が物語の舞台の大部分を占めます。友人ハロルドの誕生日を祝うためマイケルのアパートを訪ねた複数のゲイたちが織りなす会話劇を中心に描いています。

登場人物は全部で9人。
マイケル:舞台となるアパートを借りているゲイ。恋人はドナルド。
ドナルド:マイケルの恋人。
エモリー:オネエキャラ全開の陽気なゲイ。室内装飾家。
ハンク:数学教師のゲイ。ラリーの同棲相手。
ラリー:写真家で浮気性のゲイ。ハンクの恋人。
バーナード:黒人のゲイ。
ハロルド:パーティーの主役で特異な風貌の持ち主。遅れて登場する。
アラン:マイケルの大学時代の友人で弁護士。唯一のストレート(異性愛者)。
男娼:ハロルドのためにエモリーが手配したプレゼント。

8名のゲイ+1名のストレートがアパートの一室に集い、お酒を飲みながら自由に語り合う。途中、ゲイを毛嫌いするアランとエモリーの間で殴り合いの喧嘩が起こったり、マイケル発案の「最愛の人に電話するゲーム」を巡ってゲイ同士の対立が露呈していきます。序盤の和やかなパーティーのムードは時間の経過とともに少しずつ変化を見せていき、終盤に入ると冷静さを失ったマイケルの勢いに引っ張られるかたちでゲイたちの間に険悪なムードが広がっていくのです。そうしたゲイ同士の複雑な人間模様を通じて、ゲイの本質的苦悩――孤独、自己否定、愛の不毛…を浮き彫りにさせています。

物語の舞台が制限される&会話劇が中心になる傾向があるため舞台劇の映画化は当たり外れが大きいのですが、本作の場合ゲイという特異な事情を抱えた人々が織りなす会話劇が想像以上にスリリングに描写されます。ゲイ同士の本音と本音のぶつかり合いによって狭いアパートに異様な緊張感が流れていくのです。

巨匠フリードキンが描く、切実なゲイの生態。間違いなく傑作です。
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