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真夜中のパーティーのRのレビュー・感想・評価

真夜中のパーティー(1970年製作の映画)
4.7
あまり期待してなかったがこれは大当たり!!! やっぱフリードキンはいつの時代も攻めてるわー。主人公のマイケルはgayで、お仲間さんのハロルドのために、自宅で誕生日パーティーを開いてあげる。トータル7人のゲイたちが集い、その大部分がキャンプなオネエさんたち。彼女らがオカマむき出しでワイワイ楽しくやってるところに、マイケルの大学時代のホモフォビックな親友アランがたまたま立ち寄ることによって、とんでもない修羅場になっていく、という密室会話劇。舞台劇の映画化なんやろなとちょっと見たら分かるくらい会話メインで、最初はみんなしゃべりすぎなのが若干気になったが、馴染むと面白くなってくる。前半は英語が分からない人にはちょっとシンドイかも。ほとんどが他愛ない会話なんやけど、英語だとオカマっぽいウィットと毒に富んだカラフルな言い回しに溢れてて、とても面白い。オネエはアメリカでも毒舌なんすね。日本語字幕には台詞の面白さがあまり反映されてない感じ。コメディー感がちょっと伝わりにくいと思う。残念。てとこから、後半はスゴイ。何だかんだでずっとその場に居残ってる唯一のノンケ君アランを含めて、みんなで強烈なゲームを始めるのである。それは、自分が今までで一番愛した人に電話をし、愛してると告げることができるかどうかを競うゲーム。ゲイやから、ヒヤヒヤなんです。で、いやいやながら、みんなひとりずつ電話をかけていき、良くも悪くもいろんなことが起こる。そこで起こるすべてのことから浮かび上がってくるのは……同性愛を自分のアイデンティティの一部として生きることは、社会に異常だとラベリングされ、排除されてる、それ故に、個人の人生において、また他者との関係において、苦々しくつらい、たくさんの歪みが生じてしまっている、という事実なのです。そりゃゲイなんやから当たり前やろってなるところなのだが、めちゃめちゃ興味深いのは、その問題がゲイ当事者にのみ当てはまるわけじゃないってこと。実は社会全体にそのダークな影が行き渡ってる。ホモじゃない人には関係ねーじゃん、ってことにはならない。なぜそう言えるか。それは、ホモフォビア自体、いかなるものであれ、差異というものに対する排除の精神の、ひとつの表れでしかないからだ。他者に対して人が持つ排除の精神は、そのまま自分自身にも適用される。自分が排除される側にならぬためには、自分はこうでなければならないという拘束になり、制限になり、息苦しさになる。それは自己否定、自己嫌悪につながる。また自己を偽り、隠し、他者を偽ることにもなる。それによって罪悪感が生じ、さらにはそういった否定的感情を抑え込もうとすることによって、精神疾患や自殺願望などにすら繋がっていく。あらゆる人間が他の誰とも違う唯一無二の存在であるということが、絶対的真理であるにも関わらず! 多様性こそ自由であり、幸福の源泉であるのは明白なのに! みんなが自分らしさを最高に開花させて楽しく暮らしていくって何て難しいことなんだろう! だから知るということはホント大事だなと思った。アランのフォビアだってエモリーやハンクを知ることによって明らかに変容している。アランの真実が何だったのか、考える余地を残してるのも素晴らしい。そして、最後のセリフ、I don't understand any of it. I never did. そんな人生にしないように、自分らしく生きよう、と強く強く思った。めちゃくちゃ濃厚な2時間。見てる間はしっかり長く感じたけど、見終わってしまうと短かかったと感じる不思議な感覚。いやー面白かった!
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