イチロヲ

透明人間のイチロヲのレビュー・感想・評価

透明人間(1954年製作の映画)
3.5
人体実験により透明人間にさせられた元軍人の男が、悪事を働いている闇組織に肉薄していく。円谷英二が特技監督を務めている、東宝の怪奇映画路線。

典型的な勧善懲悪のドラマであり、社会から逸脱した存在となった透明人間の男(河津清三郎)が善人側に付いて奮闘する。ゴシック・ホラー要素は希薄だが、透明人間の暗躍が頼もしいので、ただただ純粋な気持ちで応援したくなる。

あらゆるカットに透明人間の存在を暗示させる小ネタが仕込まれており、特撮の妙を享受することが可能。身体を浮き立たせるために道化師のメイクをすると、眼球も一緒に浮き上がるところが不思議だが、そこは大人の事情として置いておこう。

撮影当時の東京の町並みと風俗が映像に収められているため、資料的価値のある映像世界に関心が高まる。そして、昔の邦画独特の抑揚で演技する子役と、透明人間を相手にした一人芝居が、どうしても笑いのツボに入ってしまう。
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