ひでやん

レベッカのひでやんのレビュー・感想・評価

レベッカ(1940年製作の映画)
3.9
妻を亡くした富豪男性と旅先で出会い、貴族の後妻として迎えられた若妻が、死んだ前妻の影に追い詰められる恐怖を描いたヒッチコックの渡米第一作。

ヒロインの名前ではなく、一度も登場しない姿なき亡霊をタイトルにし、名もなきヒロインの「私」を観客の目線にするヒッチコックは流石。同じホテルに滞在する英国貴族のマキシムとデートを重ね、「思い出を香水のようにビンに詰められたらいいわ」という無垢なヒロインが美しくて可愛い。

結婚の申し出はやや唐突に感じたが、序盤のテンポはこれくらいが良い。甘いラブロマンスは前座で、間もなくサイコスリラーの開演時間となる。屋敷の至る所に残る前妻の生活感、屋敷中に在る前妻の気配、押し寄せる『レベッカ』というタイトル…。

今も尚、レベッカを崇拝する家政婦長ダンヴァースによって、死して尚も存在感を放つレベッカ。その人物像はまるで見えなかったが、音もなく現れる無表情なダンヴァースがその輪郭を描き、完璧な女性像が刷り込まれていく。

そして前妻と比較され、認められない屈辱と絶望をたっぷりと味わった後、マキシムの言葉が全てをひっくり返す。第二幕、衝撃サスペンスの開幕である。虚像と実像、嘘と真実、クライマックスへの怒涛の畳み掛けが見事。

あの日、何があったのか…。

MOON あなたは知ってるの
MOON あなたは何もかも
ひでやん

ひでやん