茶一郎

レベッカの茶一郎のレビュー・感想・評価

レベッカ(1940年製作の映画)
4.3
 「サスペンスの神様」ヒッチコックによるアメリカ進出映画。タイタニック号についての映画企画が頓挫、まさに沈没し、この『レベッカ』の製作に至りました。
 そんな本作『レベッカ』はヒロインの結婚から始まる心理サスペンス。世間知らずで純真なヒロインが、イギリスの大富豪と結婚するも、その大富豪は謎の死をとげた元妻レベッカに思いを馳せ、それどころか大富豪の邸宅、大荘園マンダレーには、まだ今は亡きレベッカに仕えている召使いがいる始末。
 どうやら大富豪も、大富豪の邸宅も普通ではない。次第に精神を衰弱していくヒロインに死者レベッカの念が襲っていきます。

 と、いかにもアメリカ的なロマンスの入り口とは思いきや、中身はサスペンスと思いきた、出口はホラーのそれであるというが『レベッカ』。
 「死者が蘇って、生きている者を監視していると思いますか?」という召使いの言葉通り、大富豪も、屋敷の至る所にレベッカの頭文字「R」が遺されたマンダレーも、レベッカという死者に取り憑かれているように見えてくるのです。
 ヒッチコック監督自身も言及していますが、常に霧に覆われ、地理的にもどこにあるか不明瞭、まるで幽霊屋敷の様相なマンダレーこそ本作『レベッカ』の主役。本作と同じく、配偶者に怯える「俺(私)の配偶者が俺(私)を裏切るわけがない」型のスリラーの『断崖』とは異なり、本作のヒロインを襲うのはマンダレーという屋敷であり、レベッカの怨念であるという点が非常に特異でした。

 主役である幽霊屋敷マンダレーを出てからの法廷劇など、退屈なシークエンスが目立つ一方、舞台をもう一度、マンダレーに戻るラストの展開、そこで映る光景には目を疑います。レベッカの怨念が、記憶が、地獄の業火としてマンダレーを覆う、まさしく目に焼きつく見事なラスト!
茶一郎

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