yukihiro084

刑事ジョン・ブック/目撃者のyukihiro084のレビュー・感想・評価

4.3
ジョンを意識し始めてからの、
レイチェルの溢れ出てしまう想いがいい。

刑事ジョン・ブック 目撃者。
ピーター・ウィアー監督。(80年代と
言えばピーター・ウィアーよね。)
 
ハリソン・フォードには代表作が多い。
スター・ウォーズ、
インディ・ジョーンズ、
ブレードランナー。
(世界を変えた)SF超大作の
ヒーローのイメージの強いハリソンだけ
ど、実は今作から始まる1980年代半ば
から7、8年が、ハリソン充実の面白い
時期だと思っている。個人的には、
今作と(ワーキング・ガール)と
(心の旅)のハリソンがお気に入り。

基本的に、俳優とは(人たらし)だと
思う。トムだって、ヒューだって、
エディだってみんな人たらしだ。
今作のハリソンはその中でも、
人たらしの極みだろう。

別に今作はアクション大作ではない。
アクションを期待してみると物足りない。
正直、アクションシーンはほとんどない。
(エアフォースワン)みたいな無敵な
大統領を演じている訳ではない。
もっと普通の男を演じている。
序盤にこそハラハラするサスペンスな
感じにもなるが、サスペンスでもない。
犯人は最初からわかっているので、
ミステリーでもない。あえて言えば、
ラブストーリーかもしれない。

ダンス・ウィズ・フルブズや、ラスト・
サムライや、アバターに近い。初めて
知った異文化に触れた主人公が、戸惑い
ながら、世界の見え方を変えてゆく、
そんな話だ。ハリウッド大作と言うより
ミニシアター系の匂いもする。次作の
(モスキート・コースト)もそうだった。

ある少年が殺人を目撃する。
犯人の顔も見てしまう。
その(なかなか厄介な)犯人から
守るため、刑事ジョン・ブックは、
(少年とその母親の住む町)に潜伏する
ことにする。その町は、移民当時の
生活を守るアーミッシュの村だった。

現代文明を捨てたような生活を送る
村の人々と母子、(現代人)ジョンとの
デコボコな交流が始まる。

まず、子役のルーカス・ハースがいい。
大きな瞳。その表情。トイレのシーン、
彼が犯人を見つけるシーン、を印象深く
しているのは、ルーカス君の熱演が
あってこそだと思う。

夫を亡くしたばかりのレイチェルを演じた
ケリー・マグギリスと慣れない世界で
初めてやることに戸惑うジョンを演じる
ハリソンの2人は、気付けばいつもいつも
相手を目で追ってしまう。

事件が終わればそれぞれの場所に戻る。
終わりは来る。必ず来る。
終わりを感じれば感じるほど、自分の
気持ちは誤魔化せなくなってゆく。
蓋をすればするほど、その思いは、
溢れ出てしまう。

ユーモアがあり、誠実さもある
ジョンに、笑ってしまうレイチェル。
ハリソン・フォードそのままの
キャラクターと思えてしまう
人たらしな主人公をハリソンは
魅力的に演じている。なぜ彼が
スターであり続けるか今作を観ると
よくわかる。

派手さはないが、好きな映画。
ハリソンとケリーの相性もよし。
いいのよね。

若くして逝去した
アレクサンダー・ゴドノフが懐かしい。
(ダイ・ハード)と違って怖い顔は
していない。今作で彼は、穏やかで
実に気持ちのいい男を演じている。
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