シュトルム凸映画鑑賞記録用改め

去年マリエンバートでのシュトルム凸映画鑑賞記録用改めのレビュー・感想・評価

去年マリエンバートで(1961年製作の映画)
3.8
シャレオツなタイトルに前から気になっていた映画。恵比寿でやってると知って行ってみた。
これは確かに難解な映画だ。あまりの繰り返しの冗長さに寝不足気味の頭が何度か一瞬の眠気を催したのも事実だ。
しかし、時系列に沿って、ストーリーを追おうとするから難解なのであって、話のコアにあるものはごく単純な男と女の物語だ。人妻にモーションを掛ける男。男と駆け落ちするという決断を先延ばしにする人妻。妻の取り扱いに難渋する夫。映画の「羅生門」に影響を受けたという前知識だけで鑑賞に臨んだのだが、話の辻褄が合わないのは、有り得たであろう話の流れをごたまぜにぶち込んでいるからだろう。妻が駆け落ちをする選択肢、しない選択肢、あるいはその過程で妻や愛人に死に近い運命がもたらされる事も有り得るのだろう。全ての可能性が平等にかつ平行して描かれるから戸惑ってしまう。
去年マリエンバートで、というタイトルには実は意味がない。私には、意味がないということに意味があるように思われる。つまり、前の逢瀬が去年なのかいつなのか、それがマリエンバートだったのか違う何処かだったのかは曖昧で、真実とは関係がない。このように、whenとwhereが定かならぬということは、物語が属人的な誰かの「特別な物語」ではなく、普遍性を持った誰にでも起こり得る「ありきたりの物語」であることを示しているのではないか。
端から見れば迷いようのない単純な回廊や庭園で、迷ってしまう男と女。それを最後に言葉で説明してしまったのはやや安直な気もするが、この分かりやすい補助線の提示により、結論は明瞭なように感じた。