オトマイム

さよなら子供たちのオトマイムのレビュー・感想・評価

さよなら子供たち(1987年製作の映画)
4.8
大昔に観て記憶が薄れていたけれど、そうだ、これはこんなにも切ない映画だった…この度再視聴したらその美しさと戦争の愚かさに茫然となった。

第二次大戦中のフランスの寄宿舎学校。悪戯やいじめはあっても古いアルバムの頁をめくっていくかのようなみずみずしく愛おしい日々。ジュリアンとボネをはじめ子供達の演技があまりにも自然で繊細であることに驚く。
その頁のどれもが印象的。例えば竹馬で遊ぶ。チャップリン映画の鑑賞会。そしてレストランでのシーンではボネの緊張感や心の揺れに胸が締め付けられる。また冬の朝の教室、

Ce garçon n'est pas un Français
(あの子はフランス人じゃない)

当時フランス語を勉強し始めたばかりの私にも聞き取れたフレーズ。その冷酷な響きに凍りついた。
今回改めて気づいた細かい描写もある。ユダヤ人というのは名前でも、顔でもわかってしまう、そんなことさえ昔の私は知らなかったのだ。わかったつもりでちゃんと理解していなかった。

子供が主役の映画には名作が多い。本作は『シベールの日曜日』とともに私にとってとくべつ大切な作品になった。子供時代の気持ちをそっくりそのまま大人の自分へ運んできた芸術家を私たちは愛さずにいられない。