ちろる

さよなら子供たちのちろるのレビュー・感想・評価

さよなら子供たち(1987年製作の映画)
4.9
「僕はあの一月の出来事を一生忘れない。」
カラーでありながら控えめな色彩が寒々しい冬のプロヴァンの景色と空襲で怯える子供達の心の不安感を体現しているようだった。

きれいごとじゃない戦争だからな。
と言われ、信頼していた人間の裏切りを知ったジュリアンの顔、そしてボネに手を振った後のジュリアンの顔がずっと脳裏に焼きつく。
泣き叫ぶわけでもなく、何もできない自分の無力さに諦めに近い思いを感じた悔やみを何十年も引きずるルイ マル監督の魂の声が聞こえてくるような作品だった。
戦争に関する映画は好き嫌いが真っ二つに分かれるけど、「ライフイズビューティフル」とか「禁じられた遊び」とか、私はどうも子供の視点から描いた戦争映画には弱いらしい。
もうジュリアンの切ない瞳が画面に映し出される度に何度も何度も泣いた。
死も、裏切りも、不条理も本当はまだ知る必要ない無邪気な時間に、世の中の暗闇を見せた戦争の罪はとても重い。
ルイ マルが何十年もこのエピソードで心に傷を負い、哀しみを引きずったように、今を生きる私たちもまたこれを観て彼の少年時代のショッキングな出来事をまずは知り、そして受け入れることが自分の中に受け入れることが同じ過ちを繰り返さないないための第一歩なのかもしれないとも思う。
だからこそ大人たちだけでなく子供たちにも知ってほしい、観て欲しい名作。
ちろる

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