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新・座頭市物語のMASHのレビュー・感想・評価

新・座頭市物語(1963年製作の映画)
4.0
座頭市シリーズ第3作目。今回からカラーになり明るく鮮やかな作品になっているかと思いきや、ある意味それまでの2作以上に暗い作風となっている。この作品は座頭市を含むヤクザな世界にいる人々の業の深さが描かれている。シリーズの中でも屈指の泣ける作品。

今作はたくさんのプロットが用意されており、やや混雑している印象。一見関係のない話が乱列しているように見える。実際そうである部分も多いが、これらの要素が上手いこと最後の方で一つのテーマへと収束していくのだ。そのテーマとは「渡世へ足を踏み入れた人々の運命」である。

幼馴染との再会、剣の師匠との再会、ある女性との出会い、それら全てに上記のテーマへ通じるものがある。そして全てが、市がその生き方を変えることができない悲しさへと繋がっていく。師匠の妹と結婚を約束した矢先、男が復讐しにやって来る。刀を抜くのと思いきや、なんと市は命乞いをするのだ。そこからの人の優しさと残酷さが込められた展開は涙なしでは観られないだろう(本当に少しウルッとしてしまった)。

カラーなのに色調はとことん抑えられ、それと同様に内容も暗く重い。ラストで市が去っていくというのは定番だが、この作品のラストは心苦しいものがある。まさに市をはじめ、ヤクザな渡世に身を落とした者の逃れられない運命を描いたラスト。

ストーリーが多少ゴチャついてはいるが、しっかり師匠との対決へのお膳立てはしっかりしており、シリーズの型が徐々に完成に近づいていくのが分かる。そして、ストーリーの面でもシリーズ全体に通じる暗い部分が強く押し出されている。個人的にはすごく好きな作品。
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