サマセット7

ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1のサマセット7のレビュー・感想・評価

3.5
ハリーポッターシリーズ第7作品目。
監督は前2作同様デヴィッド・イェーツ。
主演はシリーズ通じてダニエル・ラドクリフ。

前作の結末を受け、世界はもはやヴォルデモート卿の意のままになりつつあった。
ハリー、ロン、ハーマイオニーの3人は微かな希望に賭け、ヴォルデモート卿の魂の入れ物である複数の「分霊箱」を探す旅に出る。
しかし、箱の在り処も破壊の方法も分からない。ようやく見つけた箱自体が持ち主を惑わす始末。やがて3人は疲弊していく。
一方、ヴォルデモート卿は「死の秘宝」を探し求める。「死の秘宝」とは一体何か…。

今作は、原作7作品目の「ハリーポッターと死の秘宝」を2分割して映画化した前編である。
長大な原作を出来るだけ忠実に映像化する意図での前後編となる。
他方、前編のみを一本の映画としてまとめる工夫はほとんど凝らされていないため、今作のみ鑑賞しても物語としては完結していない。
いわば起承転結の、承の途中で終わるような具合である。
今作の鑑賞時は、必ず直後にPart2を鑑賞できるようにしておくことをお勧めする。

今作と次作には、原作最終章だけあり、これまでの6作品の登場人物やエピソード、アイテム、魔法などがほとんど説明なく、多数登場、引用される。
ある程度単独作品としてまとまっていたこれまでと異なり、今作と次作だけは、前6作品を見ていることが前提の作りになっている。
前6作品を見ているファンにとっては、あれやこれやの思い出を、ハリーたちと共に振り返ることができるファンムービー的な作品でもある。
今作鑑賞前に、前6作品を見ておくことをお勧めする。

今作単独の見所としては、懐かしいキャラクターの再登場や顛末と、分霊箱と死の秘宝を巡る謎の解明にあろうか。
相変わらずイェーツ監督の独特のダークな演出で一貫されている。

ロードオブザリングを思わせる分霊箱の性質や、エクスカリバーの逸話を想起させる泉のエピソードなど、古今のファンタジーを総括しようとする原作者の意気込みを感じる。
また、ヴォルデモート卿の思想は、アドルフ・ヒットラーを思わせ、英国人である原作者に未だに残る「悪」の原風景が感じられる。

あくまで今作は一つのまとまった物語の前編に過ぎない。
感想や振り返りは後編を見てからが適切だろう。
公開時、今作から次作まで、8ヶ月待たされたファンはご愁傷様というほかない。