nt708

バグダッド・カフェ<ニュー・ディレクターズ・カット版>のnt708のネタバレレビュー・内容・結末

4.9

このレビューはネタバレを含みます

日本のミニシアターブームを牽引した本作。とんでもなく面白いと思える自分は、今やミニシアターでしかやっていないような渋い映画が大好きな生粋のシネフィルと化しているのかもしれない。映画を仕事にしてから、初めて映画を本格的に観始めた自分としては、観客としてようやく映画好きの仲間になれた気がして嬉しい。

本作の何が良いって当然一言では表せないのだが、まずもって挙げるべきはジャスミンの人間性だろう。はじめこそ、ジャスミン自身も、周りの人間もお互いの違いに苦悩し、距離を感じていたが、徐々に距離を縮めていきながら文字通りの家族らしくなっていく。さらに、ジャスミンと周りの人間だけではなく、周りの人間同士がジャスミンによって距離を縮めていくのは何とも微笑ましい。こういう心の拠り所のようなカフェがあったら是非行ってみたいものだ。

物語だけでなく、本作は映像としても興味深い。独特の色彩感覚は唯一無二であるし、ミニシアターで流れている映画が持つ間みたいなものがとても心地よい。

ミニシアターで観る映画って福袋を開けるようなもので、あらすじを読んでも面白いかどうかは、幕が開けてのお楽しみなところがある。それだけ、当たりはずれの振れ幅が大きいのがミニシアターの醍醐味なのだが、こういう良作にときどき出会えるから、ミニシアターに通うことはやめられない。いつかまたあのカフェが恋しくなって、この映画を観るような気がする。
nt708

nt708