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バグダッド・カフェ<ニュー・ディレクターズ・カット版>の小のレビュー・感想・評価

3.8
「午前十時の映画祭8」で鑑賞。アメリカ合衆国ラスヴェガス近郊のモハーヴェ砂漠。ある日、ドイツから旅行にやってきたヤスミン(ジャスミン)が夫と喧嘩し、車から降ろされてしまう。彼女は一人で歩き、モーテルとガソリンスタンドとカフェを兼業する「バクダッド・カフェ」にたどり着く。

カフェの敷地にはちょっと変わった人達が住み着き、家族とともに暮らしているが、仕事を抱え込み余裕のない女主人のブレンダがいつも不機嫌で、ピリピリ、ギスギスとした雰囲気が漂っている。

訳ありそうなヤスミンをブレンダは警戒し、厄介払いしたがるも、ブレンダは持ち前の人懐こい性格で、家族とカフェの住民たちの間に溶け込んでいく。そんなヤスミンを快く思わないブレンダだったが…。

いい話ではあるけれど、特に劇的なことが起こるわけでもないこの映画が人気になったのは、主人の不機嫌が家族の居心地を悪くするという、個人的にも身に覚えのありそうなことが、ちょっとしたことで、劇的に変わるということを示しているからではないだろうか。

現代は皆が不機嫌に陥りやすい時代であるような気がする。仕事、学校、日常生活でのストレスが大きく、ちょっとしたことでイライラする。それは周囲へ伝播し、気だるい雰囲気のなか皆が我慢している。この状況を打破するにはどうしたら良いのか。

答えは単純明快。ヤスミンのように振る舞えば良いのだ。快適になるようきれいに掃除をする。子供の好きなことに関心を持ち楽しく会話し、一緒に遊ぶ。子供が真剣に取り組んいることは、自分が気に入らないことであっても否定せず認める。皆が楽しくなるようちょっとした工夫と努力をする。

言葉で言われても聞く気にならないけれど、能動的に観る映画でいい感じに示されると、素直に受け止めることができる気がする。ヤスミンは等身大のローモデル。いい映画だったなあ、ようし自分も、とちょっとだけいい人になれそうな気がする映画、かな。

こんなヤスミンが何故、冒頭のような捨てられ方をするのかが、少し気にはなるけれど…。

●物語(50%×3.5):1.75
・小さな幸せのお話。とはいえ掃除は苦手。手先も不器用だし…。ヤスミンのようにはなかなかできない現実。

●演技、演出(30%×4.0):1.20
・ヤスミンとブレンダがナイスキャラ。ブレンダの歌、うめーと思ったけど、アフレコじゃないのかな。

●画、音、音楽(20%×4.0):0.80
・聞いた記憶はあるようなないようなだった「コーリング・ユー」がイイですね。
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