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恋はデジャ・ブのろのレビュー・感想・評価

恋はデジャ・ブ(1993年製作の映画)
5.0

「1つの場所から出られず、毎日が同じことのくりかえしならどうする?」

天気予報士フィルは聖燭節の中継のためパンクスタウニーへ向かった。
例年通り木の扉から現れたウッドチャックは、今年は冬が長引き、春はまだ遠いと占う。
中継を終えテレビ局に戻ろうとするフィルだが、吹雪で足止めを食ってしまい・・・

2022年は好きだった映画をもう一度鑑賞する一年にしよう!
ということで「もう一度見たい!プレイバック、私の名作たち!」というスローガンを立て、さっそく「恋はデジャヴ」からスタート!
(ちなみに12月29日、久しぶりに「アパートの鍵貸します」を見てみたら良すぎて、大晦日の夜におかわりしてしまいました)

「明日がないなら二日酔いはないんだぜ。何したって平気ってことよ」
パトカーに追われながら、線路を蛇行運転。
ストロベリーシェイク、チョコレートケーキ、タルトにドーナツ。テーブルに並んだデザートを同僚に心配されながら暴飲暴食。
”2月2日”の生活に慣れてきたフィルは明日が来ないことを逆手に取り、自由気ままに過ごすようになる。

好きなタイプは、感性豊かで、勇気があって、泣くことを恐れない人。
大学の専攻は、19世紀のフランス詩。
好きなお酒は、ベルモットをロックで。
嫌いなものは、ホワイトチョコレートとファッジ。
”今日”を繰り返し生きることでコツコツ聞き集めた彼女のプロフィール。
あるときはバーで意気投合、またあるときはレストランで語り合い、粉雪の舞う中頬を寄せ合いダンスする。
だけど、二人の結末は決まっている。
全部計画だったのね、私をなびかせた罰よ。
口説き文句を変えてみても、どこで「おやすみ」を告げようと、彼女はフィルを平手打ち。
次第にフィルは、彼女の顔を見るのもつらくなっていき・・・

電源を挿したままトースターをお風呂にどぼん。
塔の上から飛び降り、毒を飲み、首を吊り、それでも懲りずに2月2日はやってくる。
「悲しいのは明日になると君はこのことを全部忘れていること。もう諦めたよ。あまりに何度も自殺したから本当に死んだ気がしてきた」
「でも、死んでも必ず蘇るんでしょ?だったら決して悪いことじゃないわ。前向きに考えるのよ」
フィルの打ち明け話を受け止めてくれたのも励ましてくれたのも、大好きな彼女だった。

「僕は自己中心的な男なの?」
「あなたの1番目立つ個性よ」
食欲・性欲・承認欲求に夢中だったフィルは、意中の人を振り向かせようと躍起になるも全敗。自殺未遂を経て、ホームレスのおじいさんを死なせまいと必死になる。
だけどそうやって未来を変えようとあがいているうちはうまくいかない。
ピアノのレッスンや氷の彫刻と同じように、人助けも趣味の1つになったフィルは、大好きな人の顔を雪に描きながらこう呟く。
「明日どうなろうと、将来どうなろうと、今は幸せだ」

目的や目標に向けて準備をする、何度も練習をする。
将来を見据えて努力を重ねることは大事なことだと思う。
だけど”将来”を頑張りすぎて、今この瞬間の自分自身をおろそかにしてしまうのなら、それはすごくもったいないことだとも思う。

”未来”のために”今”を消費するばかりだったフィルの2月2日。
今この瞬間を楽しむようになった彼に訪れたのは・・・

昨日と代わり映えのない今日だって、
私の言葉、私の態度、私の考え方1つで、いつもと違う今日になる。

( ..)φ

毎年2月2日に見ようと思いつつ、見逃しつづけていた「恋はデジャヴ」。
今年は思い切ってフライングしてみましたが、やっぱりよかった!
横柄なビルマーレイも、いい人マーレイもどちらもチャーミングでステキ!
ウェスアンダーソンの新作にも出演されているのかな。劇場で会えるの楽しみにしてるよー!

そしてそして、、細く長くどころか、もういないんじゃないのレベルですっかりご無沙汰なフィルマですが、まだまだ続けていきたい・・・!
みなさんの感想にもコメント欄にもお邪魔する年にしたいなぁ。
本年もどうぞよろしくお願いいたします!


( ..)φ 2021年鑑賞キロク 68本(すべて旧作鑑賞)

ー激アツ!すでにおかわりしたい部門ー
・ヒッチャー(1986)
・ラースと、その彼女
・ジャイアンツ
・ノートルダムの鐘
・我らの生涯の最良の年
・悪魔のいけにえ(1974)

ー涙ちょちょぎれ、励ましてくれてありがとう部門ー
・イレイザーヘッド
・イコライザー
・ハッピーボイスキラー
・エクソシスト ディレクターズカット版
・アメリカンサイコ
・嗤う分身

ーわんこそば並におかわりしたい!殿堂入り部門ー
・インサイドヘッド
・アパートの鍵貸します
・サスペリアpart2/紅い深淵 完全版

3月ぐらいかな?母に「デヴィッドリンチのブルーベルベット、花壇出てくるし春っぽいしよかったよ~」とおすすめされていたのに、「イレイザーヘッド」を薦めかえしたまま放置していました(母ごめん)今年は頑張ってチャレンジしてみようかな!キンチョーする~!

ちなみに、ウシになるんじゃないかぐらい反芻した1シーンは「イージーライダー」の冒頭。飛行場で麻薬の取引をする4人がフレームインする場面でした。
あのサイドミラー、飛行機の轟音、そして取引を終えたデニスホッパーとピーターフォンダが走り出したとたん流れ出す、Born to be wild・・・だれか炊き立ての米をくれー!
「イージーライダー」はラストも笑っちゃうほど唐突であっけなく、今度は米の代わりに酒が欲しくなる、痺れまくりの幕切れでした。


(↓ 2018年7月31日 DVD鑑賞レビュー ↓)

「明日がなければ二日酔いはない。何をしたって平気ってことさ」

開き直ったフィルは無茶な運転に強盗、ドーナツのドカ食いと大暴走。
さらに美人プロデューサーを口説くことに…。

彼女の情報を引き出し、何度もアタックするフィル。
いいかんじにロマンチックなふりをするフィル(ビルマーレイ)のそこはかとない気持ち悪さがたまりません(笑)

なかなか埋められない理想と現実のギャップ。
このループから抜け出せない絶望感。
次第にフィルは追い詰められていきます。
そして、いつしか”死”を意識するように。

車の墜落に、浴槽で感電死、飛び降り自殺…。
一度は確実に冷たくなった体。
それなのに、時間が来ればまた元通り。
”死”にさえも嫌われた彼は、自分自身を振り返り、ふたたび”生きること”を見つめていくのです。

バーでむさくるしいおじさん二人と話すシーンがとってもすきでね。
「1つの場所から出られず、毎日が同じことの繰り返しならどうする?」って尋ねるフィルに、おじさんこう答えるの。
「それは俺の人生だな」
彼はループのなかで暮らしているわけじゃない。
だけど、人生に対する漠然とした諦めや失望感、めちゃくちゃよく分かるんですよね。

”毎日を大切に”とか、”一分一秒を懸命に生きよう”とか、そういうきれいごとで終わらせたくない。
この映画からいろんな生き方を教えてもらうと、なんだか少しだけ”道”が広がったような気がします。

「明日どうなろうと、将来どうなろうと、いまは幸せだ」
ろ