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恋はデジャ・ブのdeenityのレビュー・感想・評価

恋はデジャ・ブ(1993年製作の映画)
4.5
何となしに見た作品が意外と良作だったりした時の嬉しさったらないですよね。コメディのジャンルに置かれていたのであまり期待してなかったわけですが、全然期待値を上回る作品でした。とは言え個人的には笑いどころはあまりなく、コメディ作品というよりはヒューマンドラマの視点で楽しんでいました。

主役を演じるのはビル・マーレイですが、それなりに人気者であるからかちょっと嫌な奴ですね。周りを見下した態度。仕事にも気分が影響する。仲間からも白い目で見られる。でもそんなことフィルからすればどうでもよくて、さっさとこんなクソ田舎から帰りたい、と思ってる。そんな奴。
そんなフィルに天罰かの如く、その2月2日が永遠に無限ループするという地獄が訪れる。

もしあの日に戻れたら、という妄想は誰もがしたことがあると思いますが、永遠にそこから進まないことほど苦痛はないでしょうね。どれだけやりたい放題やっても、いい女と寝ようとしても、どうやっても同じスタートラインに戻る。まさに無限地獄。
人間は例えば労働で、穴を掘ってそれを埋めるだけの作業のようなただ意味もないことを何度も繰り返すと発狂するってのを聞いたことがあります。フィルにとってはまさにそうで、そのループから抜けるためには死をも選択しますが、それでも逃れることはできません。

さすがに同情しますね。リタに神だと打ち明ける時なんかは町のみんなが何者かってことまでわかっています。ゲームで言えばドラクエで絶対に完璧なクリアでしか次に進めないから自分の街の住人に声をかけまくるみたいな感じ。なんなら氷の彫刻やらピアノのスキルまで身につけますが、それだけの月日が経っているって恐ろしいことですね。

しかしおじいさんの死を経て、逆らえない運命もあることを実感してからのフィルの変わりぶりには少し感動します。心を入れ替え、人に親切にし、その日できるベストの行いをする。細かい修正をして、良い方向に持っていこうとするのではなく、常に相手のことを考えたベストを尽くす。
その結果、彼の元に集まったのはたくさんの笑顔だ。何気ない明日かもしれないが、明日を迎えることは本当はすごく幸せなことなんだと。二度と同じ時間は流れるはずがないのだから、今を大切にすべきなのだと。そういう大切なことを教えてくれる作品でした。
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