【そして、みんな静かに狂っていく】
アメリカの雪深い田舎街。いかにも閉塞感がある。
ある夜、兄弟と悪友の3人が森の奥で、墜落して雪に埋もれたセスナ機を発見します。機内にはパイロットの死体と(日本円で5億もの)大金の入ったバッグが。
「警察に通報しよう」「いや待て。どうせ犯罪絡みの金だ。いただいちまおうぜ。誰も探しには来ないさ」
「正気なのか!それは犯罪だぞ」「じゃあ、今のままのクソみたいな暮らしに満足なのか!俺はうんざりだ」
そんなやりとりがあります、たしか(汗)。
結局、「しっかり者の弟が全額を預かってほとぼりが冷めるのを待つ。誰も金を探している様子がなかったら全員で街を出る。誰かが探していることがわかったら金をすべて燃やそう」。最初は、こんな単純な計画(シンプラン)だったのだが…。
思わぬところから計画にほころびが出たり、仲間割れしたり。
この手のサスペンスの出来を決めるのは、結局、登場人物の人間性がリアルに描けているかどうか、ですよね。その点、この映画は良く出来ています。
弟の妻を含めた4人のキャラクターを描きわけて、その人物の性格と背景に基づいた言動に、「たしかにコイツならそう考えるよな」というリアリティがある。それが人物を動かし、物語を動かすから、サスペンスに説得力がある。
監督はサム・ライミ。「死霊のはらわた」でカルト的な人気で出てきた人ですけど、のちの「スパイダーマン」3部作を観れば、そのあたりの人間描写の手腕はよくわかります(トビー・マグワイアの親友の心の闇の深さ!)。
俳優たちも素晴らしい。
ごく普通の4人が大金を目の前にして、「そして、みんな静かに狂いだす」。封切時のキャッチコピーです。オモシロイです。