ハル奮闘篇

シンプル・プランのハル奮闘篇のレビュー・感想・評価

シンプル・プラン(1998年製作の映画)
4.5
【そして、みんな静かに狂っていく】 

 アメリカの雪深い田舎街。いかにも閉塞感がある。
 ある夜、兄弟と悪友の3人が森の奥で、墜落して雪に埋もれたセスナ機を発見します。機内にはパイロットの死体と(日本円で5億もの)大金の入ったバッグが。
 「警察に通報しよう」「いや待て。どうせ犯罪絡みの金だ。いただいちまおうぜ。誰も探しには来ないさ」
 「正気なのか!それは犯罪だぞ」「じゃあ、今のままのクソみたいな暮らしに満足なのか!俺はうんざりだ」
 そんなやりとりがあります、たしか(汗)。

 結局、「しっかり者の弟が全額を預かってほとぼりが冷めるのを待つ。誰も金を探している様子がなかったら全員で街を出る。誰かが探していることがわかったら金をすべて燃やそう」。最初は、こんな単純な計画(シンプラン)だったのだが…。

 思わぬところから計画にほころびが出たり、仲間割れしたり。
 この手のサスペンスの出来を決めるのは、結局、登場人物の人間性がリアルに描けているかどうか、ですよね。その点、この映画は良く出来ています。
 弟の妻を含めた4人のキャラクターを描きわけて、その人物の性格と背景に基づいた言動に、「たしかにコイツならそう考えるよな」というリアリティがある。それが人物を動かし、物語を動かすから、サスペンスに説得力がある。

 監督はサム・ライミ。「死霊のはらわた」でカルト的な人気で出てきた人ですけど、のちの「スパイダーマン」3部作を観れば、そのあたりの人間描写の手腕はよくわかります(トビー・マグワイアの親友の心の闇の深さ!)。
 俳優たちも素晴らしい。

 ごく普通の4人が大金を目の前にして、「そして、みんな静かに狂いだす」。封切時のキャッチコピーです。オモシロイです。