MOCO

シンプル・プランのMOCOのレビュー・感想・評価

シンプル・プラン(1998年製作の映画)
3.5
「俺は自首するよ。
 もうおしまいだ、あの金さえなければ・・・。
 俺は疲れた。もういいんだ、未練はない、怖くなんかない。
 これでいいんだ、一生責めさいなまれて暮らすなど俺には無理だ、だからひとおもいに殺れ。
 お前にも好都合だろ、大事な家族や将来があるんだから。
 俺にはなにもない・・・。
 お前の役に立ちたいんだよ・・・」

 田舎町の肥料店で働くハンクは妻サラとの間にもうすぐ赤ちゃんが産まれ、裕福ではないものの倖せな暮らしをしていたのですが、ある冬の日、失業中の兄ジェイコブとジェイコブの友人で失業中のルーと3人で、道路から外れた禁猟区の雑木林に立ち入り、墜落して雪に埋もれたセスナを見つけます。機内に入ったハンク達は死亡したパイロットと100ドル札で440万ドル入ったバッグを発見します。
 ジェイコブとルーはお金を山分けして事故機のことは黙っていようと持ちかけるのですが実直なハンクは警察に届けることを提案します。麻薬がらみのまともなお金ではないと主張するジェイコブとルーと意見を交わす内ハンクの気持ちは180度変わっていきます。

 ハンクは『家族を含め誰にも話さないこと、そして飛行機が見つかった後お金を探している者が現れなければその後お金を分けて全員村を出る』プランを立てます。それまでお金はハンクが預かり、捜査が自分達に及ぶ危険があるなら全て灰にすることになります。

 ハンクはサラに黙っていることができず、賛同を期待し帰宅すると早々に話し出します。
 ハンクよりも堅実なサラは「法に触れ刑務所行きになる」と猛反対するのですが、その夜突然「50万ドルだけをセスナに戻して来るよう」カモフラージュを提案してくるのです。

 翌朝ハンクはジェイコブを雪の路上でタイヤ交換のふりをさせながら見張りさせ再びセスナに潜り込むのですが、ジェイコブはセスナを知られてはいけない重圧から、スノーモービルで通りかかった近所にすむ老人ドワイトの後頭部をタイヤ交換レンチで殴り付け死なせてしまうのです。
 ハンクは事故に見せかけた偽装をするのですが、罪の意識から逃れられないジェイコブは自供すると言い出すためハンクはジェイコブに「あの後息を吹き返したドワイトを窒息死させたのは自分だ。だから兄貴は殺人犯ではない」(←でまかせではなく真実)と話します。後々この殺人事件が別の殺人事件を引き起こすことになるとは知らずに・・・。

 話を聞いたサラはジェイコブが勘違いしたままにしておいた方が・・・と、殺人を咎める訳でもなく、ジェイコブに告白したことを咎めます。

 図書館に勤めるサラは別の図書館のニュースぺーバーを検索し、ある誘拐事件に使われた身代金440万ドルが行方不明になっていることを知ります。お金を処分しようとするハンクにサラは犯人は目印のないお金を要求しておりむしろ安全なお金と言い出します。

 ジェイコブは父が手放した農場を買い戻したいと言い出し、ルーは借金取りに払うお金を渡せと言い出します。ルーの話を断るとルーはドワイトの殺人を脅してくるのです。兄弟の秘密にも関わらずジェイコブはルーに話してしまったのです。
 妻は不利な立場を打開する卑劣な方法をハンクに提案し・・・

 FBIの捜査がはじまり、ハンクとジェイコブは親しい警察官のカールに警察所に呼び出されます。セスナを発見した日、ジェイコブはカールに探りを入れるため飛行機の音を聞いたとしゃべってしまっていたのです。

 FBIの捜査員とカールを現場付近の調査に案内する直前ハンクはサラからその男はFBIの捜査員ではなく誘拐犯の仲間だという連絡を受けるのですが・・・。

 原作はスティーブン・キング絶賛のスコット・スミスの同名長編小説。監督はサム・ライミ。映画のストーリーも構成も落ちもしっかりしているのですが、平凡な一般人が主人公のために大きな盛り上がりはありません。主人公はタフな男ではないごくごく普通の人なのです。激しい銃撃戦もなければアクションもないのが当たり前。そこがこの映画(小説)の良いところなのです。

 積み上げられた現金を見てしまった今さら灰にすることは出来ない・・・。殺人まで犯して手に入れた現金は手元に残すことができるのか?
 引くに引けないところまで来てしまったハンクとサラの未来はバラ色なのか?
「お前の役に立ちたい」というジェイコブの願いは叶うのか?

 雪深い静かな田舎町の事件は当たり前と言えば当たり前の静かなエンディングを迎えます。
 
MOCO

MOCO