Azuという名のブシェミ夫人

シンプル・プランのAzuという名のブシェミ夫人のレビュー・感想・評価

シンプル・プラン(1998年製作の映画)
4.2
ある雪深い田舎町、飼料店に務め、ごくごく普通の慎ましやかな生活を送るハンクが、兄ジェイコブらと共に森に墜落した飛行機の中から440万ドルもの大金を発見する。
ネコババしようと盛り上がる兄と友人だが、良心が咎めるハンクは反対し、やがてある計画へと行きつく・・・。
題名通り、初めはとてもシンプルな計画だったはずなのに、事態はドンドン悪い方向へと転がっていく。

お金が人を狂わせるのか・・・と言うより、その人間の本質を曝け出すと言った方がいいかもしれない。
この映画のチラシに『普通の人がいちばん怖い。』と書いてあった。
“普通”に見えるだけで結局内面なんて分からない。
生活に不満を抱え、こんな生活ウンザリだ、 と心の底では悪態をついていたとしても、それを一生笑顔の下に隠し通して生きたならば、周囲からは幸せな人生だったのだろうと思われる。
何かのキッカケで、それが表に出てきただけ。
それがこの映画ではお金だった。
主人公夫婦が特に顕著で、幸せを掴もうと信じて始めた計画だったのに、結果的にはこの出来事がもたらしたのは、ゆっくりとした“死”だと思う。
彼らはその後も人生を過ごしていく。
だけど、ただ死に向かって静かに暮らすだけ。
それは“生きる”という事ではない。

私の大好きなビリー・ボブ・ソーントンが、素晴らしい演技を見せてくれる作品。
ほんとはセクシーな人なのに、女性と縁のない冴えない人生を送ってきた中年男になりきってる。
彼が演じる兄ジェイコブの悲哀に満ちた姿が切なくて仕方がない。
特にバーで一人飲んでいる時のあの表情が忘れられない。
この映画とよく引き合いに出されるのが、本作監督サム・ライミのお友達、コーエン兄弟の『ファーゴ』。
確かに雪景色と主人公の思惑とは正反対の方向へ進んでいく展開は良く似てる。
この『ファーゴ』のドラマ版が、4月からアメリカで放映されるとの事でビリーが出演!
そんなの私的に最高過ぎて早く見たくてしょうがないけど、日本に来るのはいつになるやら。

主人公ハンク演じるビル・パクストン、wikipediaによると『エイリアン』、『プレデター』、『ターミネーター』シリーズ全部に出演している唯一の俳優で、全作品で殺された人物。笑
注目した事無かった~全部見直したいわ。