スギノイチ

殺し屋人別帳のスギノイチのレビュー・感想・評価

殺し屋人別帳(1970年製作の映画)
3.0
主演は渡瀬恒彦なのだが、狂言回し的な役回りであり、実質の主人公は吉田輝雄だ。
基本的には「趣味じゃねえなあ」とか言って田崎潤の蛮行を傍観するだけだ。
フランスかぶれの佐藤允と張り合いつつ認め合いつつ…な感じでとぼけたコンビを結成し、たま~に善玉側の援護をしたりする。

そんな風に呑気な作風なのかと思いきや、意外と暴力描写が多いのだ。
謝罪を要求された荒木一郎が何度も机に頭をたたきつけられたり、中谷一郎が背中を火あぶり拷問されたり…
乱闘シーンでは血が噴き出まくりで、石井輝男のエログロタッチが微妙に滲み出ている。
敵の身体に刀を食い込ませ、石で叩いて押し込みながらケタケタ笑う荒木一郎は味方側とは思えぬ怖さ。

とにかく、やたら多くの濃いキャラとドラマが複合しすぎて渡瀬恒彦があまり目立たない作品だ。
田崎潤と小池朝雄の成り上がりから裏切り合いまでのピカレスクなんてそれだけで一本出来そうな完成度なのに、プロローグであっさり見せて、タイトル前に小池朝雄を退場させる贅沢ぶり。
ヒロインらしく登場するヤクザのワガママ娘は途中で消滅し、復讐に燃える娘は渡瀬恒彦とは碌に絡まない。
主役が悪党側に属しているせいで、本来主役がやるべきことを吉田輝雄や佐藤允や中谷一郎が行うのだ。
互いが互いの役回りを食い合い、伊吹吾郎なんて後半は明らかに存在価値が無くなっている。
挙句の果てには『網走番外地シリーズ』の鬼虎(嵐寛寿郎)が登場。
ということは『直撃地獄拳大逆転』とも同一世界なのか。
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