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おばあちゃんの家のmaverickのレビュー・感想・評価

おばあちゃんの家(2002年製作の映画)
4.3
2002年の韓国映画。監督は『美術館の隣の動物園』で、第18回青龍賞シナリオ公募大賞を受賞して長編映画デビューした女性監督のイ・ジョンヒャン。2作目である本作で 第39回 大鐘賞映画祭の最優秀作品賞や脚本賞など、国内外の多数の賞を受賞した。批評家と観客のどちらからも支持され、動員数は430万人の大ヒット作となった。


冒頭で映し出されるのは山間部の田舎の風景。まるで昭和の映画かと見間違うほどの古ぼけた映像に少々面食らう。想像以上の辺境の土地に住むおばあちゃんは、これまた想像以上によぼよぼで驚く。都会育ちの息子が田舎でおばあちゃんと数日間過ごす話だが、この息子がわがままな性格でドン引きである。おばあちゃんに対する酷い仕打ちの数々にいらいらするし、本当に良い映画なのかと首をかしげながらの鑑賞だった。

このおばあちゃん、どんなに酷い仕打ちを受けても絶対に孫に怒らない。辺鄙な山奥に住み、孫に望み通りの生活はさせてやれない。それでも出来る限り孫の願いを叶えてやろうとあれこれ手を尽くす。その無償の愛を受け、少年も徐々に変わってゆくのだった。

少年はおばあちゃんの優しさに気付かない部分も多い、だがそれを後で知った時に心からの感謝に変わる。子供が成長するってこういうことなんだと思う。子供は自分の気持ちに正直だからわがままにもなってしまう。この少年も親のせいで突然右も左も分からない不便な環境に置かれてしまったわけで、不満が爆発して横柄な態度を取ってしまうのも分かる。でもその中で人から受ける優しさを嬉しいと感じ、それを返そうとする気持ちが芽生える。そう変化していくことが成長なんだと。少年のこうした変化が微笑ましかった。

少年を演じた子役のユ・スンホとお母さんを演じたトン・ヒョヒの二人を除き、後は全員現地でキャスティングした村人なんだとか。このおばあちゃんも二日間かけて監督が説得して出演してもらったらしい。演技未経験なのを、喋れなくてよぼよぼな役柄として上手く設定として活かしてあるが、素人ならではの飾らない雰囲気が随所に表れていて良い。こうした素朴な部分も本作の大きな魅力になっており、それがたくさんの人に受け入れられたからヒットにも繋がったのだろう。


これは評判通りの良作だった。じわじわと後から余韻が押し寄せてくる。何度も観返したくなる愛すべき作品だ。


自分も子供だった頃、おばあちゃんには迷惑をいっぱいかけたことを思い出した。この少年と似たような部分もある。だから自分のことを棚に上げて怒れるような立場じゃないのだ。父方、母方の祖母ともどちらも今はもういない。もっと孝行すれば良かったと思う。ばあちゃんから受けた優しさをいっぱい覚えている。それを今度は他の人に返そう。


おばあさんを演じたキム・ウルブンさんは2021年の4月17日に95歳で亡くなられた。映画のラストシーンを思い返し、涙する。
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