鋼鉄隊長

サタデー・ナイト・フィーバーの鋼鉄隊長のレビュー・感想・評価

4.0
神戸ハーバーランド野外上映にて鑑賞。

【あらすじ】
ブルックリンで暮らすトニーは悪友たちと代り映えの無い日々を過ごしていた。唯一の楽しみは土曜の夜に行くディスコ。ある日彼はそこで年上の女性ステファニーと出会う…。

 先日(4月28日)、神戸ハーバーランドで行われた映画イベント「Open Theater × Harbor Cinema」に行って来ました。高浜岸壁にスクリーンを設置しての野外上映会。しかも無料!!(まぁ交通費で映画1本分くらいは取られたが…) ポートタワーと海を背景に、300㌅のスクリーンで観る映画は中々見ごたえがある。しかもこの作品の上映は土曜の夜! まさにサタデーナイトフィーバー! 粋な企画だなぁ。
 右手を上にしたジョン・トラボルタの決めポーズとテーマ曲は、映画を観ていなくても知っている人は多い。最近では『レディ・プレイヤー1』に登場したことでも記憶に新しい。そんな超有名作は「ディスコを舞台としたサブカル映画」、「昭和のヒット作」と認知されているが、意外にも内容は暗い。実はこの映画、アメリカン・ニューシネマの影響が見られるのだ。
 アメリカン・ニューシネマとは、1960~70年代にアメリカで流行った映画ジャンルの一つで、若者を主役にした反体制的な作風が特徴。また、最終的には主人公が志半ばで倒されるといった「アンチ・ハッピーエンド」な話が多い。熱心なキリスト教徒である親への反抗から、悪友、仕事先の上司、コンテスト、あらゆるものに反発する主人公トニーの姿には、反体制的な血が色濃く流れている。そして彼の友人ボビーの顛末は、物語を一気にアンチ・ハッピーエンドへと動かす。
 しかしながら、この作品を「単なるアメリカン・ニューシネマ」と決めつけてはいけない。なぜならニューシネマの時代は既に終わりを見せていたからだ。映画史においてその終焉を決定づけた作品とされるのは、シルヴェスター・スタローン主演の『ロッキー』(1976)。三流ボクサーが努力の末に夢をつかみ取る。この典型的なハッピーエンド映画が、『サタデーナイトフィーバー』のわずか1年前にニューシネマをKOしていたのだ。ではこの映画は「時代遅れのニューシネマ」だったのか? それもまた違う。この映画は「ニュー・アメリカンドリーム・シネマ」なのだ。
 ニューシネマの終焉を見届けた上でそれを継承し未来へ繋げる。だからこそトニーの部屋には『ロッキー』のポスターが飾られていたし、物語の結末もアンチ・ハッピーエンドでない希望の光が差し込んでいた。原作「Tribal Rites of the New Saturday Night(新しい土曜の夜の部族儀式)」の題字にもあるように、この物語はトニーが成長する通過儀礼であると同時に、映画史の変化も記録しているのだ。
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