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スクラップ・ヘブンのrissaのレビュー・感想・評価

スクラップ・ヘブン(2005年製作の映画)
5.0
李相日監督の作品の中でダントツにスキ。大好きで、中学生のころから何度見返したかわからない!

ある日のバスジャック事件をきっかけに出会った3人の若者。

『世の中のやつは想像力が足りねえんだよ』
地味な性格のシンゴは、自由奔放に生きる清掃員のテツのその言葉をきっかけにに徐々に感化され、意気投合。後に2人は『目には目を、歯に歯を』そんな理由から『世界を変える』ために”復讐請負業”を密かに始める……

のだれど、わたしからみると、その行為はまるで、鬱屈とした日々に嫌気がさしているシンゴがその現状から逃れたいがために、快楽を追い求めて「気持ちいい今」に酔っているように見えた。まるでむちゃくちゃで、後先なんて感がえずに全力疾走する青春のやり直しのように。

けれど、シンゴが徐々に「快感」にはまり込んで行くその横で、この「今」が永遠には続かないことを誰より一番わかっていたのは、未来のことなんて何も考えていない、一見変わり者に見えるテツ自身だったんだと思う。軽快なタッチの音楽がますますその雰囲気を助長させているように感じた。なぜなら、精神を病んだ父を抱えるテツ。序盤から見せる、精神病棟でのコミュニケーションが成り立たないやりとりに一瞬見せる暗い表情。そこにテツの本性が表れている気がした。

この映画、前半のファンキーな展開とは打って変わって、後半が進むにつれてどんどん2人が絶望的な状況に追いやられていく、その差がたまらない!言い方は良くないけど、後味の悪い、救われない映画ってたまらなく好き。
自暴自棄になっていくテツの未来を絶望視する姿、現実に引き戻されていくシンゴ、世界を終わらせるために爆弾の開発をするサキ、3人の、すれ違い、突き放して、それでも求め合う人姿に気持ちよくて綺麗な映画なんかよりずっと、人間らしさを感じた。

エンドロールで流れるフジファの蜃気楼、そんなに絶望させないで〜ってくらい最後の最後まで重たい気分になる。最高。
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