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約束の土地のinuatsuのネタバレレビュー・内容・結末

約束の土地(1974年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

世の中には、持てる者と持たざる者がいる。それをなくすことはほぼ不可能だろうし、そのこと自体は悪いことではないと思う。問題があるとすれば、得てして持てる者は自分の地位を守るために持たざる者から搾取をして抑圧するということである。

多くの場合、若者は持たざる者である。彼らは、同僚など同年代の人々が持てる者から搾取されるのを間近で見る。彼らを作者から救うための方法は、自分が持てる者になり、持たざる者への待遇を変えることだ。そうすることで、憎悪は少なくなり、より人間性溢れた世界が実現できるはず。

しかし、持てる者と持たざる者の間の社会的流動性がない世界で、持たざる者が持てる者になるのは簡単なことではない。持たざる者同士で協力することも必要だが、持てる者やその周りの人間をうまく使うことも大事になってくる。

そこで「他人をうまく使う」ことを覚える内に、持てる者を目指すことは、より人間性溢れた世界を実現するための手段ではなく、それ自体が目的となる。持てる者になった瞬間から、人は自分の地位や財産を守りたいという誘惑に取り憑かれ、逃れることが難しくなるのだ。

成功体験に潜む魔物が、今日もまた保身に走る権力者を生み出し、この世界の搾取の構造を再生産していく。
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