はねぎうす

リチャードを探してのはねぎうすのレビュー・感想・評価

リチャードを探して(1996年製作の映画)
2.9
 映画で『リチャード三世』といえば、ローレンス・オリヴィエの55年版、そして本作の前年にイアン・マッケランが演じたヴァージョンがあって、英国人による(しかもどちらもRSC仕込みの生粋のシェイクスピア劇俳優)リチャード三世を前にしてギャング映画出身のイタリア系アメリカ人であるアル・パチーノがどうこの役に挑むのか、そのへんの四苦八苦がにじみ出たドキュメンタリー。

 途中で「アメリカ人はシェイクスピアに対して腰がひけてる」なんてセリフも出てきたけれど、アメリカにおけるシェイクスピアへの距離感というか、コンプレックスみたいなものがはしばしに伺える。アル・パチーノは自身の流儀であるメソッド演技を駆使して、実際に英国を訪問したりなんかして役柄を開拓しようとするんだけれども、400年以上前の人間なんかシミュレートのしようもない。

 むしろバッキンガム役のケヴィン・スペイシーのほうが印象に残ったかな。この頃から『ハウス・オブ・カード』(これも原作は『リチャード三世』からインスパイされている)的な役回りが板についてたんですね。