カルダモン

[Focus]のカルダモンのレビュー・感想・評価

[Focus](1996年製作の映画)
4.7
盗聴オタクの青年を報道クルーが取材する。オドオドと乗り気ではない青年を相手に映像素材を撮り集めていくが、なかなかこれといった面白い絵にならない。業を煮やしたTVディレクターは実際に盗聴しているところを画面に収めようと、嫌がる青年を追い立てて強行的に事を進め始める。
強引に盗聴器材を積んだ車に乗り込み夜の街道へ。映像素材を撮り溜めていく中で偶然キャッチした会話内容から新宿西口のコインロッカーで拳銃の受け渡しが行われることを知ってしまう。会話内ではロッカーの鍵は新宿ハルク前にある電話ボックスに置かれているという。現場に駆けつけると果たしてそこには本当に拳銃があり、、。

いわゆる巻き込まれ型であり、手持ちのビデオカメラで撮られたフェイクドキュメンタリー風の作品。74分というサイズもジャスト感があって良い。どうせならわざわざブラウン管のテレビで観たい。

『PICNIC』『FRIED DRAGON FISH』と合わせて90年代後半、憧れの対象だった浅野忠信。この映画の狂いっぷりは妙に説得力があった。「キレる若者」という言葉が一般化する前の時代のリアリティで、内向的でなにを考えているのかよくわからない青年像という90年代の形。震える怒鳴り声とかメチャクチャな言語使いとか制御できていない感じ。あれはたぶん脚本では表現しきれないと思うので、完全に浅野忠信のセンスなんだろう。十分に感情移入させてからのブチギレ、全てが終わった後の虚無虚脱。朝焼け。

当時、新宿ハルクの電話ボックスとかコインロッカー見に行った。今もあるかな。