この映画は最初、観る者を突き放す。ずるくていい人とは言えない大人たち、かわいげのない子供。そして、いろんなことが想像の斜め上を行くブラジルという国。人の命が安いのも、文盲率が高いのも、日本から見るとまるで異世界である。
思わぬきっかけで始まる初老の女性と少年のロードムービーだが、二人の距離感は縮まることなく、しかも先の展開はまったく読めない。限界状況の先が見えない旅の中で、二人はだんだんいい人とかわいらしい子供に変化していく。二人が共に歩んだ日々はいつか忘れられてしまうのか、それとも永遠に心に残るのか。冒頭、突き放された観客は、気がつけばこの作品世界に没入しているのである。ロードムービーの傑作。