貝

セントラル・ステーションの貝のレビュー・感想・評価

セントラル・ステーション(1998年製作の映画)
3.5
まだ知らないどこか遠くの国の景色を夢みることができる。映画のそういうとこが好き。ブラジル映画はそう思わせる作品が多くて好きだしこの映画もそうだった。
こんなに温かそうな風景が広がっているのに現実はとても厳しい。孤児になった少年はストリートで生きるか悪いオトナに売られるしか道がない。読み書きができない人もいる。犯罪は日々そこら中で起きる。それでもブラジルはいつか行ってみたい国のひとつだと思わせる美しさと危うさがある。

父親探しの旅にでる赤の他人、ジョズエ(ヴィニシウス・ジ・オリヴェイラ)とドーラ(フェルナンダ・モンテネグロ)。ほとんどこの旅を介して愛情を取り戻すドーラの話。彼女は人間性を欠いたオトナ、独身初老、人生を諦めたおばちゃん。ピュアで生意気なこどもと行動を共にする過程でどこかへ捨ててきた何かを取り戻す。旅の途中で優しくしてくれたトラックドライバーに恋をして、一瞬で砕け散った。お金を使い果たして疲弊した知らない町で、ふたりで見つけた仕事で自らの誇りを見出した。捨ててきたものが何かもわからなければ、何がそうさせたのかもわからない。そうそうこういうのがロードムービーだったな。久しぶりに観て思い出した。
旅は何かを取り戻すことができる。そう映画で教わった。
貝