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セントラル・ステーションのkoyamaxのレビュー・感想・評価

セントラル・ステーション(1998年製作の映画)
5.0
冒頭から貧困ゆえのハードな世界をみせてくれます。とるにたらない安物の商品を盗んだ若者が、刑務所が満員だったからという理由で警察にその場で射殺されるようなことが日常の世界です。

主人公は字が書けない人のために駅の片隅で手紙の代筆屋を営むおばさん。
仕事だけきくとすごく慈善的な仕事にきこえますが、書くだけ書いて、手紙を送らず手数料をもらい、手紙は家にしまわれたまんまです。とてもすれたおばさんです(-_-;
 
ホームレスとなった子供に出会いますが、養子斡旋の施設に預けて子供と分かれます。また日常にもどるはずでした。

しかし養子斡旋施設は実は臓器売買組織で
子供は数日、もしくは当日中にその後命を絶たれ臓器を取り出され、様々な場所へ売り飛ばされるわけです。
その事実を知り、彼女は後先考えず少年を連れ立ち旅立つのです。

この連れ出すまでの冒頭が下衆なりの正義感、もしくは愛情が垣間見え、のっけから激しく心を揺さぶられました。このおばさんがどうなるのか最後まで見届けたくなるきっかけとなりました。

全編乾いたトーンで貫かれていています。
直接的に情感を盛り上げる演出はあまりありません。

おばさんも別にいい人ではないし、
子供だって純粋ではない。悪態もつきます。善も悪もない、目的地へ行ける所まで行くだけの間柄。ゴールにたどり着けば、そこで終わりの間柄。

ですが、都会でゆっくりと腐ってゆくだけだったおばさんの心が変わっていきます。

あとはとてもロードムービーらしい展開です。そういう意味ではそんなにひねりがあるわけではありません。


これだけ二人心通わせた道中なのに、
子供にとっては人生の刹那な瞬間でしかなく、本来の場所へ向かうまでの隙間時間のようなやがて忘却される時間だということを、人生の月日を重ねてるおばさんの方だけが悟るのはやはり切ないですね。

全く語られてませんが、人身売買組織を袖にしてきたので、街に戻ったとしても彼女がその後平穏に過ごせる保証もありません。
それでも最底辺で生きている彼女なりの彼女らしい生き方を取りもどした事に意味があると思いたい。

ふと疎遠になった人とかを思い出したりするような映画でした。
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