★ パワーを溜めないと必殺技は使えないよ
ニヤニヤが止まらない作品でした。
いわゆるひとつの居候型のコメディ。異分子によって日常が変化する…という定番ものです。今回の異分子は江戸時代からタイムスリップしてきた“サムライ”でした。
通常、この系統の作品はカルチャーギャップを主軸にしますが、本作の場合はサムライと《居候先の母子家庭》の交流を中心に据えています。だから、雰囲気が“ほのぼの”としているのです。
そして、見事だったのがサムライを演じた錦戸亮さんの立ち振る舞い。それと鈴木福くんの存在感でしょう。実際の6歳児が年長組の役を演じる説得力に敵うものなし。ポケモンのパンツ姿なんて完璧な表現でした(当たり前)。
だから、お恥ずかしい話ですけれども。
物語中盤のお菓子作りの場面は涙腺崩壊。
確かにリアリティに拘るならば6歳児に無理な場面もありますが、そんな細かいことは良いのです。あくまでも本作はファンタジー。素直に騙されれば良いのです。
また、リアリティは他の部分で補っていました。母子家庭における冷凍食品の使用率とか、電子レンジの使用率とか(あ。同じ意味だ)。育児と仕事の両立…という現代的なテーマをサラリと描いたことも好印象(嗚呼、定時退社の視線の冷たさよ…)。
ただ、そんな中で難を言うならば。
主人公たちの周囲を取り巻く一癖も二癖もあるキャラクタを活かせていないこと。そして、物語の構成上、中盤が盛り上がり過ぎてしまったこと。…とは言っても重箱の隅を突くような指摘なのですけどね。
まあ、そんなわけで。
中村義洋監督の安定した手腕に惚れ惚れできる作品。この安定感を喩えるならば、年間通して勝利数が計算できる先発投手…って喩えが野球になるのは“オヤジ”の証らしいですぞ。加齢臭には気をつけよう。
最後に余談として。
本作は愚息と一緒に鑑賞したのですが「続編が小説になっている」と教えたら「是非とも読んでみたい」とのこと。小学三年生には早いような気がしますが、折角の読書熱を冷ます理由はありませんからね。買ってあげたいと思います。
それにしても「続きを知りたい」って最高の誉め言葉ですよねえ。