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第七天国のtakのレビュー・感想・評価

第七天国(1927年製作の映画)
4.3
2023年3月でサービス終了となるGyao!を使わなきゃ!と駆け込み視聴。最後にセレクトしたのは古典と呼べる時代のクラシック「第七天国」。以前から気になっていた作品。タイトルは、宗教的には天国の階層や天使の住処めいた意味があるそうだけど、これがどうストーリーにからんでくるのか。Perfumeの楽曲にも同じタイトルの名曲があるしw。

パリの下町。姉に虐げられて絶望していた娘ジャニースが、下水掃除人シコと出会う。彼女の窮地を咄嗟の機転で救ったシコは「行くところがなければ俺のところに」とジャニースと暮らし始める。夫婦だと偽ったので警察が確認に来るまで同居という条件だったのが、お互いに離れられなくなる。でもシコは"愛してる"が言えない。それでも一緒にいることが幸福だと言う気持ちを表現する。
「シコ、ジャニース、天国!」
幸福を感じた二人。しかしドイツの侵攻により、シコは戦地に赴くことになる。二人は毎日同じ時間にお互いを思う約束をする。

活弁付きではあるがサイレント映画を観るのは久々なので、120分弱もつかなと思ったが、全くの杞憂。直球ラブストーリーの前半、戦争スペクタクルを含めた後半、感動のラストまで飽きさせない。主役二人に絞ったラブストーリーだと勝手に思っていたが、後半のスケールの大きさと、最前線の塹壕の中での人間模様に、戦争の無意味さと人間ドラマの深みを強く感じる。

「俺は特別な人間なんだ」
「常に上を向いているんだ」
という前向きなシコの考え方。生き方のベクトルがそうした言葉で印象づけられる。さらに地下で働く下水道掃除人から、地上に出て道路清掃人になりたいと願うこと。階段を上った7階にある部屋。そこが自分にとっての天国。それが二人にとっての第七天国になる。

相手を見下すような言葉を吐いたり、無神論者だったシコが変わっていく。ジャニースも笑顔を取り戻し、シコの生き方に共感するようになる。主人公二人の成長は、伏目がちだった目線が上がって行くこと。地下から地上、7階の住まいと、上へ上へと向かう舞台装置が相乗効果となっていて、スクリーンのこっち側の感動も盛り上がっていく。巧い。
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