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テルマエ・ロマエのトルーパーcomのレビュー・感想・評価

テルマエ・ロマエ(2012年製作の映画)
3.5
武内英樹監督/阿部寛主演のタイムスリップコメディ。
同監督の『翔んで埼玉』公開タイミングでひさびさに観賞。

阿部寛演じる古代ローマ人の建設技師ルシウスが現代日本にタイムスリップし、銭湯の浴場にワープするという出オチ的な設定で強引に押し切る勢いは◎

【1】キャスト
■古代ローマ人
古代ローマ人が現代日本の銭湯に登場という、とりあえず絵だけで面白い設定。
だがしかし、原作マンガのこの絵ヅラを邦画で実写化するのは難しい。

本来であれば、マイティソーことクリス・ヘムズワースとか、ヒュージャックマンあたりをキャスティングして笑いを誘う必要があるんだろうけれど、そんな大物が日本映画に出演してくれるわけはないので、出した結論が
「主演:阿部寛」
ただの阿部寛なのに、風呂場の爺たちに「おほおおお、ガイジンさんじゃあ~」ってリアクションさせることで半ば強引にカルチャーギャップコメディとして成立させる力技。
まあキャスティングは秀逸だったなと思います。

イタリアのスタジオでロケを敢行し、白人のエキストラを1000人規模で登場させながら、市村正親や北村一輝を古代ローマ人として押し切るあたりも苦笑しつつも笑う。

■平たい顔族
現代日本にタイムスリップしたルシウスが出会う「平たい顔族」こと現代日本人。
文字通り平たい顔のほのぼのジジイたちを大量に投入し、阿部寛のルックスとのギャップだけで笑わせにかかる力技。

風呂場開けたら阿部寛、っていうありえないシチュエーションに対するボケ爺のリアクションが
「今日はガイジンのヘルパーさんかあ~。じゃ、お願いしまーす」
はさすがに吹く。

■上戸彩
ルシウスの出現になぜか驚かず受け入れる爺たちで笑わせにきてるので、驚き要員として配置されているのが上戸彩演じる売れない漫画家のマミ。
ちょいちょい雑で棒なリアクションを終始繰り広げるが、最初から最後までなんかしらんけどエロイ。

銭湯の脱衣所に倒れるルシウスに興味示してただスケッチするだけのシーンなのに、なぜうつ伏せになってエロイ格好をする必要があるのか謎。

落ち込むルシウスをただ励ますだけの真面目なシーンなのに、なぜ唐突に右肩を全開にはだけるのか謎。

エンドロールでは本来、古代ローマで学んだ経験で実家の温泉旅館を立て直す姿とか、漫画家として成功していく姿とかを描くのがセオリーなのに、
特に意味もなく湯船につかり、沈んでから浮き上がって胸見えそうにする映像をひたすら流す謎。


<以下、ネタバレあり感想>


【2】ストーリーほか
ぶっちゃけ、見どころは序盤のタイムスリップからのカルチャーギャップによるギャグ連発シーンと上戸彩ちゃんの無意味にエロいビジュアルだけです。
映画として用意されるべき演出やストーリーは欠落しすぎ。

■伏線回収
嫁を寝取られる件、物語上なんの意味も持たせてないのなぜ?

マミの実家の温泉旅館が赤字でピンチっていう件、結局ラストで救済されるでもなんでもないのなぜ?
古代ローマで学んだ経験で黒字化させるベタな展開はマストじゃないのか?

ただルシウスとのやりとりをマンガにしましたってだけじゃなくて、
彼女のクリエイターとしての本質的な部分が偉大な古代ローマに触れたことで成長する描写を描くべき。
「マミは絵だけは上手い」って設定があるのだから、
古代ローマ人たちを絵の上手さで驚かせつつも、「こういうの描いてくれよ!」って言われてハッと何かに気付くとか。

■爺たち
マミの親父たちが逆タイムスリップしてきてオンドル建設し始めるけど、
序盤で彼らがそういう大工仕事などの職人だっていうような伏線が張られてないので唐突感しかない。

あのビジュアルの爺たちがローマにやってくるっていう絵だけでめちゃくちゃ面白くなるはずなのに、ただ温泉作ってあげるだけってもったいなさすぎる。
戦場の真ん中に降臨してブリーフ一丁に身ぐるみはがされて疾走する絵とか入れるだけでいいのに。

古代ローマの文化から現代人側が何かを学ぶようなシーンなにひとつなくてひどい。
せめてマミのマンガ技法に劇的な何かを与えるとか。

■言語ギャップの件
ルシウスら古代ローマ人はラテン語をしゃべってるという設定で、現代日本にきたときはラテン語と日本語で会話がかみ合わないように描写されているのに、古代ローマにきたときは普通に日本語でしゃべって会話しているので違和感。

役者にはタモリの中国語みたいな、それっぽいけど無意味な言語をしゃべらせておいて、後から役者にアテレコさせて洋画の吹替版みたいな雰囲気にすればよかったのでは。
で、ラストに阿部寛にカタコトのカタカナ日本語で感動的なセリフを言わせれば爆笑しつつ感動できたと思う。

総じて、通常の映画なら盛り込まれるはずの、演出/主人公の成長/伏線の回収などが弱めで映画としては残念な感じがありました。

【スコア】
★3.5で。
TV的だけれどまあとりあえず笑える映画ではあります。

風呂タイムスリップする際に登場する謎のデブ指揮者が、3回目くらいに
「やべえ予想外に出番キタ💦」
ってなるシーンがいちばん好き。

イタリアロケした古代ローマの街並みと、ローマ版公衆浴場のセットは邦画としては圧倒的でした。

2.5くらいの凡作かなって出来だけど上戸彩ちゃんがカワイイので+1.0して3.5ということで。
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