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テルマエ・ロマエのsoffieのレビュー・感想・評価

テルマエ・ロマエ(2012年製作の映画)
4.0
2012年劇場公開

原作はヤマザキマリの漫画

「のだめカンタービレ」「翔んで埼玉」の武内英樹監督作品

ヤマザキマリの「漫画大賞2010年」「第14回手塚治虫賞文化賞短編賞」を受賞した大ヒット漫画の映画化

映画の中で上戸彩演じる真実が、漫画家の卵としてこの作品を描いたストーリーになっているが、本作は原作者ヤマザキマリがイタリア人の夫と結婚して、夫の学術研究のためポルトガルに住んでいた時、ポルトガルの一般の家やマンションにバスタブが無く不便を強いられているうちに、どうしても湯に浸かりたくなり、湯船が恋しくなり、日本のアパート用の小さなお風呂でいいから作れないか試行錯誤したり、日本にはちょっと行ったらお風呂屋さんや、スーパー銭湯があり、温泉宿という温泉に入るための宿泊施設がピンからキリまであるお風呂文化にホームシックになり、ローマ帝国には風呂文化があったのになぜ現代まで残されていないのだ!!
風呂文化こそ偉大なる民衆の文化ではないか!!
…と湯船につかりたい欲求が古代ローマまで遡り、日本人が当たり前に思っているお風呂がどれだけ素晴らしい文化なのかを作者本人が痛感して、プライドの高い偉大なる古代ローマ人が、現代の日本のお風呂文化を見たらどう思うだろうか?をテーマに描いた2700年の時を駆ける壮大なお話し。

典型的なローマ市民の浴場設計士ルシウスを「王家の紋章」のナイル川に落ちては現代と古代エジプトを行き来したキャロルのように、お風呂に潜ったり、落ちたりする度に日本と古代ローマを行ったり来たりするコメディ。

「のだめカンタービレ」「翔んで埼玉」の武内監督が漫画の力強さを残したまま映画化した大ヒット映画。

笑える映画が観たくて
以前はAmazonプライムにあるが視聴不可だったのが、自粛のおかげでNetflixで配信がはじまり久しぶりに鑑賞。

ひたすらに温泉に入りたくなる…♨

日本の濃いお顔俳優さん全員集合映画。

イタリアでの撮影は歴史あるチネチッタ撮影所に、世界的大ヒットドラマ「ROMEローマ」の為に建設された巨大セットを使用した、その際イタリアの映画関係者、エキストラから日本人の俳優が全員日本人に見えない!!と言われたほど出演俳優陣は顔も体格も日本人離れしていることが証明された(笑)

ヤマザキマリは異色の漫画家だ。
ピアニストの母に「若いうちに世界を見なさい」と14歳でたった1人言葉も通じないイタリアに飛ばされる。
後に美術学校に通うが学生寮の友達は全員常に貧しく、観光客相手のアルバイトをしながら身を寄せあって生活した。

根無し草の詩人の恋人の子供を妊娠して、この子を育てるためにお金が必要だから漫画家になる!と言って周りを驚かせ、言葉通り第1作目にして日本の出版社の目に留まり、イタリアでの七転八倒生活と、後に結婚した(子供の父親ではない)イタリア人の義理実家での生活を漫画にして出版、有名ではなかった彼女が「テルマエ・ロマエ」で彗星の如く日本の漫画界でスマッシュヒットを飛ばし、お風呂屋さん文化と温泉ブームを巻き起こした。

お風呂の湯船に関して個人的な思い出がある。

仕事のためたった1人でアイスランドのレイキャビックに滞在した時
アイスランドはとても物価が高くカフェのランチが3千円~、夕食は5千円~、スーパーでサンドイッチと飲み物を買っただけで2千円超えの国。
アイスランドは国が破産して1度売りに出されたけど買い手が付かず、それまで銀行業が基本だったのを大自然を武器に国民一致で6月~9月のハイシーズンを観光の国にシフトチェンジした。
売りは真夏でも市内から1時間バスで走ると雪と氷の世界が広がる大自然と、地熱発電で出来た5000平方メートル(50mプール4個分)の巨大な露天風呂ブルーラグーン。

一握りの銀行業に従事するお金持ち以外は漁業か牧羊を主にしていた国なので、一般市民はお風呂に無頓着。

突然の観光化で安い宿をとると普通の民家の一部屋や、個人スーパーの2階の一部屋だったりする中、日本の4星ホテルの基準を備えているホテルは1番安い部屋で8万円もした。
なのに部屋にシャワーしか無く、日本の関空→成田空港→ヘルシンキ空港→アイスランド→ホテル送迎バスで1時間→道端で降ろされホテルまで徒歩
大粒の雨が降る中くたくたのドロドロになって到着したホテルの部屋に湯船が無い事に絶望した私は、後先考えず湯船のある部屋にアップグレードして欲しいとフロントで言うと
「このホテルには湯船ないわよ〜」
「どこのホテルでも湯船はないわよ〜」「ブルーラグーンに行くでしょ?その時お風呂に入れるからそれでいいじゃない😊お風呂なんて毎日つからないんだし」と言われてカルチャーショックを受けた。
(私が行ったのは4年前なのでその後もホテル建設は続いているから今は湯船のあるホテルもあるはず)

普段シャワーで済ます人でも、日本人なら極度に疲れたらバスタブのお湯に浸かりたいはず!!

私が行った26カ国でバスタブが無いのが当たり前の国、アイスランドとネパール。

ヤマザキマリがポルトガルの生活でお風呂のお湯に浸かりたくて死にそうになって、妄想が膨らんで「テルマエ・ロマエ」が生まれた気持ちが分かる。
わたしは10日の旅の後は日本に帰国して家のお風呂に入れたけど、ポルトガルで生活していたヤマザキマリはお風呂に入れなかったのだから。

原作者のお湯につかりたい日本人特有の欲求が生み出した、空前絶後のお風呂映画。
夫が歴史研究者なので、ヤマザキマリの作品に対する歴史考証も塩野七生に並ぶ詳しさ。

いつだって「必要は発明の母」
ヤマザキマリがバスタブのある国に住んでいたら生まれなかった作品。

ほんと温泉の露天風呂が夢に出てきそうな映画。
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