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バリエラのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

バリエラ(1966年製作の映画)
3.5
【バリエラバリバリメイズに我迷う】
『アベンジャーズ』でブラック・ウィドウを拷問する役ゲオルギー・ルチコフでも有名なスコリモフスキが『早春』を撮る前に手がけた超難解映画。

デヴィッド・リンチの『インランド・エンパイア』さながら、脳内にある像をランダムに貼り付けた混沌がそこにはあります。とはいえ、リンチとは違い東欧の難解シュール映画にありがちな難解さの中に社会への反発を仕込むスタイルなのでリンチよりかはしっかりとした軸を持っています。

いきなり、縄に縛られた状態で学生がマッチ箱を咥えるゲームをしているところから始まる。一人の学生が勝利し、金を手にするのだが、誰一人縄を解いてくれない。

金と自由を得た彼は街を走るのだが、周りの群衆も彼の影のように走る。いく先々で群衆は彼を見張る。サーベルを手に入れるのだが、持て余しているようで、暇をつぶすために吸う煙草は火をつけた途端爆発する。

自由を得たようで、狭く窮屈そうなのだ。

『不思議の国のアリス』が、不思議の国という奥行きが無限にあるような世界にいるのに、その世界に操られ窮屈を強いられる(時には物理的に)アリスの生き様を描いていたが、本作はまさしく当時のポーランドをワンダーランドに見立てた『不思議の国のアリス』といえよう。

ポーランドがスターリン時代の強烈に抑圧された社会から穏健な共産主義に変わり、国民の生活も落ち着いたかに見えた。しかし、平和と自由が訪れたポーランドにも依然と抑圧はあるんだ。バリエラ(=障害)はあるんだとスコリモフスキは本作で叫んでいるのです。

ポーランド史初心者のブンブンには、純粋なシュールレアリズムな世界に浸ることでしか楽しめないもどかしさはあれど、それもバリエラ。バリエラがバリバリに利いたメイズ(=迷路)を十分堪能しました。
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