ブタブタ

幸福のブタブタのレビュー・感想・評価

幸福(1981年製作の映画)
3.5
権利問題で長らく未DVD化で幻と言われた作品。
原作はエド・マクベインの87分署シリーズ『クレアが死んでいる』
87分署シリーズは火曜サスペンス劇場で渡辺謙・主演で『わが町』シリーズとしてドラマ化されており、そのときのサブタイトルは
 『わが町VII「日本語学校の教師,風俗の女,恐喝者-焼殺された刑事の恋人は複数の顔を持つ女」』
この火サス独自の仰々しくも長ったらしいサブタイトルが本作のテーマをえも知れず言い表してしまっている。
本屋で無差別発砲事件が起こり3人の犠牲者の中に若い刑事(永島敏行)の婚約者もいた。
主人公の刑事(水谷豊)らは初め通り魔的な犯行と思われたこの殺人が犠牲者の中の1人を最初から殺す目的で、それを偽装する為に関係ない人間迄一緒に殺したのではないかと推理し犠牲者達の過去や身辺を探るうちに人間の裏の顔、闇に直面する。
謎の多い無差別殺人とそれを追う二人の刑事の構図はデヴィッド・フィンチャー『セブン』と同じで「銀残し」と言う特殊なフィルム処理による映像はセピアカラーとカラーの中間の様な色合いで、コレも『セブン』で使われてる。
市川崑監督による『金田一耕助』シリーズが全5作で完結しミステリーが原作、撮影・長谷川清、美術・村木忍、更にはキャスト陣も『金田一』と可也被っておりこれは幻の金田一『第六作』でもあり、87分署シリーズを原作とし水谷豊・主演による『金田一』に続くシリーズ化を狙ってたのかも知れません。
『金田一』の田舎・地方の土着的、血の因習やそれに纏わる一族の愛憎やソレを動機とする殺人に対し、『87分署(を原作とする本作)』は都会で生きる人々の孤独や家族の絆、普通に見える人々にもそれぞれ抱える問題や闇がある等々、主人公(探偵・刑事)を中心に謎の事件とそれに関わる人々の群像劇は共通しつつ、市川崑による実験的映像・演出で『金田一』とは対称的なミステリーになってます。
ただし水谷豊演じる妻に逃げられた刑事と幼い2人の子供のドラマに比重が置かれている為『金田一』程の探偵物としての面白味はやや薄い。
三人を殺した犯人を捕まえても、何かが変わるわけでなく捜査を通じて出会った人達によって主人公は真の「幸福」に気づく·····的なお話しなのでちょっと期待した物とは違いました。
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