真鍋新一

渡り鳥いつまた帰るの真鍋新一のレビュー・感想・評価

渡り鳥いつまた帰る(1960年製作の映画)
3.6
シリーズのお決まりのパターンを破る演出が随所に合ってなかなか楽しめた。悪役の金子信雄は、おそらくシリーズ中もっとも卑怯で悪い奴。人を騙して弱みに漬け込むスキルにかけてはアキラと同じくらい素早く頭が回る最低の輩だ。

今回は白木マリが欠席。代わりに中原早苗がキャバレーダンサーのポジションにいる。こちらはこちらでチャキチャキしていて魅力的。わざわざ街から街へアキラを追いかけて佐渡までやってきたという、自称アキラの元カノ役で、いつもやさしいはずのメインヒロイン・浅丘ルリ子がバッチバチに嫉妬する。せっかく早苗がアキラのピンチを知らせるために店を抜け出して来たというのに追い返しかけるルリ子。おい、アキラが死ぬぞ。

アキラ「俺は人の指図を受けるのが大嫌いなんだ」
ジョー「俺は自分の納得の行かねぇ仕事は、したくねぇ怠け者でね」

どんな時でも自分の美学を貫き通すアキラと、目的のためには手段を選ばないジョーの対比が今回も効果的に描かれている。早くこれになりたい。抱っこした子どもが頭をぶつけないように、少しかがんでドアを通るアキラの自然な気配り!人としてこうありたいお手本が今回も随所にさりげなく出てくるのでアキラから目が離せない。

アキラと同じコロムビア所属の歌手が登場するお歌のコーナーでは、こまどり姉妹がアキラと「おけさ数え唄」とリレーする。それにしても今回も海と山の距離がやたらと近い佐渡島のロケーションが素晴らしい。旅行に行きたい!アキラの歩いた道を歩きたい!と毎回思わされている。観光映画としては大成功。公開当時の観客も同じ気持ちだったに違いない。


渡り鳥シリーズでは事務所の壁に必ずショットガンがかけてあって、なにかあるとすぐにそれを持ち出して飛び出して行けるようになっている。我が家にもモデルガンを常備しておきたい。
真鍋新一

真鍋新一