じゅんP

ゲド戦記のじゅんPのレビュー・感想・評価

ゲド戦記(2006年製作の映画)
2.6
父の枷の真っ只中で執り行われる、薄味かつ消化不良な父殺し。

前半はシーンひとつ、人ひとりに込められたワンダーが少しずつ足りてない。主人公が元いた場所を飛び出すに至る経緯、その後出会うキャラクターの人物造形、そもそもの魔法や竜の設定etcが宙ぶらりんのままサクサク進んでしまうので、絵が躍動するシーンでもなかなか心が躍動するまでに至らずもどかしい。

初めて訪れた街の市場の賑やかしい喧騒と、その同じ場所で人が売り買いされている現実、みたいなものが平坦にふーっと流れていってしまうので、どこに反応していいのか困惑する。ハジア売りのおっさんと出会うシーンなんかも単発に終わっていて、テーマが終盤までいまいち効果的に繋がらない。

劇中で唯一、血の通ったキャラクターに見えたのが悪役のクモで、彼が出てきてやっと話に少し動きが見えた印象。(とはいえ、それも単に彼の言動が欲望に忠実=目的がハッキリしているという設定以上でも以下でもない気はするけれど。)

クモと同じくらい各人物の動きが絵の中に映し出された上で相関関係が描かれていれば…もうそれってあれですね、ほぼほぼ別物ですね。宮崎駿や高畑勲らの作品で背後に見えていた「社会」がもたらす奥行きと説得力に、改めて気付かされた。
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