このレビューはネタバレを含みます
各所で小さなプライド汚しを受け続けて行く度に殺人の欲求を自制できなくなっていき、欲求と自制の間で揺れ動く殺人鬼映画は何気に新鮮でした。
お気に入りシーンは名刺バトル。しょうもないプライドのぶつけ合いが良かった。この小さなマウントの取り合いの積み重ねが彼の自制心を崩していく。
主人公は二重人格の様で人種差別やホームレスに対しての慈愛の心は持ち合わせているのに触られたりなど少しの嫌悪から自制の枷が外れると次々と殺しをしてしまう。若しくはこの慈愛は自分は素晴らしい人間だと言い聞かせるように見せかけのもののようにも感じた。
実はこの映画、映画秘宝7月号のインセルに関する記事にて取り上げられていたので、記事を読む前に作品を見ておこうと思い鑑賞してみた。前号のインセル映画に関する記事では『タクシードライバー』や『キングオブコメディ』を取り上げていたが今作の主人公こそインセルの最終形態の様に感じた。意に反した禁欲が性欲だけでなく、殺人欲も重なっているという、サイコパス×インセルで拗らせに拗らせていて特殊だがいいキャラクターでした。