豚

アメリカン・サイコの豚のレビュー・感想・評価

アメリカン・サイコ(2000年製作の映画)
4.0
プライドと偏見にまみれた、若きエリートサラリーマンの裏の顔を描いたクライムサスペンス。
人間の二面性を軸に展開していく物語なのだけれど、クリスチャンベールの演技がいちいち面白い。
なんとなく、昔のトムクルーズを彷彿とさせる。

人の抱える闇と、鬱屈した社会の歪みがテーマで、パッと見はいわゆるサイコパスを描いた映画なのだと思いきや……ラストの展開がかなり衝撃的。
一瞬意味が分からなかったんだけれど、しっかり整理していくと事実が強烈に突き刺さる、まさにサイコな作品。

この映画自体がとんでもないブラックジョークのようなもので、笑うべきなのか、笑ってはいけないのかもはや判別がつかない。
「アメリカン・サイコ」というタイトルではあるけれど、一定水準以上の文化・情報技術を持つ国であればいくらでも言い換えることができるのまた、作品の持つ深みとテーマの真理性をよく表していると感じる。
逆に言えばこの映画を観て、感じたことそれがそのまま"自身の社会・環境へ対する関心"でもあり、映画を通した写し鏡のような構造になっている。
散々問題視されつつもないがしろにされがちな現代社会の皮肉性を、鮮やかな描写で落とし込んだ本作の重みが、クリスチャンベールの顔芸&肉体美とともに脳裏にグイグイと染み込んでいく。
真に恐ろしいのはほかの誰でもない我々なのだ、と。

ある種陳腐なテーマ性ながら、脚本・演出が非常にセンセーショナルなので、ほとんど気になりません。
個人的にはかなり響きました。
クリスチャンベールの存在感が圧倒的すぎて、彼なしではこの作品は成り立たないように思えます。

なんとなく、「ダークナイト」と似た何かを感じる。
観終わって「面白い!」と膝を打つというよりは、じわりじわりとテーマが浸透してくる、そんな不思議な魔力を持った映画。
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