櫻

アンテナの櫻のレビュー・感想・評価

アンテナ(2003年製作の映画)
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彼ら彼女らにとって家族とは、音をたてて壊れていく世界のミニチュア。そして、愛おしさをひとさじ溶かした懐かしい写真だった。少年は不思議なまなざしで遠くを見つめ、幼な子の甘い匂いを漂わせたまま、身体だけ大人になった。いつかの温度を忘れられないで、水面にうつる像にばかり手をのばし、白昼夢の中をあたかも理性的な生きもののような顔をして生きている。きっと大丈夫って言ってほしかったのでしょう。棘に似た強かさを宿したやさしい腕に抱きとめられ、長い間止まっていた時計の針は、ゆっくりと重たく動き出す。
櫻