ジェイコブ

御金蔵破りのジェイコブのネタバレレビュー・内容・結末

御金蔵破り(1964年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

かつて旗本として奉公するも、権力を嫌い、出世の為に媚びへつらう侍という身分に嫌気がさし、武士を辞めた緋牡丹平次。平次は入れられた牢屋で土蔵破りとして知られる煙りの富蔵と出会い、富蔵からその男気を買われ、御金蔵破りの相棒として誘われる。
石井輝男監督の時代劇アクション。本作はフランス映画「地下室のメロディー」を翻訳し、アレンジを加えたものたが、御金蔵破りは史実として存在し、裁判記録にもあるという。本作はテレビドラマとして、二度にわたってリメイクもされている。
本作は時代劇ではあるものの、権力を憎む監督の思いがよく現れた作品であると感じる。平次がおこうに語った一言の中に、今回御金蔵破りをするのは、成り上がるために周りの人間を簡単に利用して裏切る人間を嫌い、侍を辞めたものの、結局なりたい自分になれずにいる自分へのもどかしさからだと吐露したシーンがある。権力や金を前にすれば、簡単に意見を変えて、本来の自分を見失ってしまう人が多い現代。思い付きで会社や組織を抜けたとしても、結局その人に待つのは貧しさか惨めな未来である。平次もまさにそんな状況でやきもきする中、富蔵から話が持ちかけられた。ラストで湖に沈む千両箱を見つめる二人は、大金を失って悲しみに暮れるでもなく、またいがみ合うでもなく、仕方がないと笑っていた。二人にとって大事なのは金や地位を得ることではなく、信頼できる相棒を持ち、権力すらも恐れない大仕事をやってのけた達成感である事を象徴するシーンと言える。
ヒロインを務めた若かりし頃の朝丘雪路が、時代劇でのお約束、回し帯の「あ~れ〜」をやられているのが印象的。また、盗んだ千両箱を肥箱に入れて運ぶという、ルパン三世でも絶対にやらないであろうまさかという奇想天外なアイデアも面白い笑。
石井輝男時代劇の中ではコミカルで、比較的見やすいのは確かだが、飯の時に見るのは避けるべき映画笑