スティーヴン・スピルバーグ監督は、「シンドラーのリスト」(1993)辺りから、エンタメ一辺倒ではなく、シリアスな作品も撮る様になったと認識していたけど、1985年にも撮っていたのか。しっかり魂に届けるタイプの作品を。
監督スティーヴン・スピルバーグにして娯楽作に非ず、主演ウーピー・ゴールドバーグにして主人公は明るく外交的で非ず。
「例えば50歳近くの自分が14歳の子と性交したら、たとえ同意があっても捕まることになる。それはおかしい」と発言したクソfuckin'議員にこそ、この映画を観て欲しい。いや、観ろ。
1909年、アメリカ・テネシー州の田舎町。主人公セリーは、14歳で父親の子を二度孕った。いずれの子も、出産後すぐに父に奪われ、どこかに売り払われた。父の手が妹ネティに及ばぬ事を願うセリーだったが、ネティに求婚して来た「ミスター」(ダニー・グローヴァー)に、父の指示で嫁ぐ事になる—— 。
かくして、身を寄せる様にして生きてきた姉妹、セリーとネティの絆は引き裂かれてしまう。
近親相姦、児童虐待、性的搾取。
セリーのナレーションで幕を開ける物語。
余りにも衝撃的な内容に、何度も巻き戻して、字幕を読み間違えていないかと確かめた程。
あの時代に、黒人で、かつ女性で生まれてきた事が、彼女達の不幸の始まりなのか。
「ミスター」には亡くなった先妻との間に3人の子がおり、14歳にして妻となったセリーは3人の子の世話までさせられる事に。
夫の喉を掻っ切ってしまえ、と何度も思った。
何年虐げられてきたのだろう。
正妻でありながら、メイド、いや奴隷の扱い。
若きウーピー・ゴールドバーグ。
前述の通り、他の作品で見られる様な明るさは、本作にはない。
奥ゆかしく、歯にかむ表情が印象的なセリー。ウーピー・ゴールドバーグの抑えた演技が光る。
ミスターの元恋人でR&Bシンガーのシャグが歌う、セリーのブルースが沁みる。
冒頭でシリアスな作品と記述したものの、スピルバーグらしい、喜劇的な演出がない訳ではない。しかし、内容としては何処までもヘビー。
生き別れたネティ、そしてセリーが産んだ息子アダムと娘オリビア。
長い長い時を経て、彼女達に訪れる奇跡。
これは、
嗚咽して泣いた。
14歳の娘を持つ父親としては、「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」で心臓を鷲掴みにされた生贄の人みたいに、痛みを伴わずしては観れない作品。