20世紀初頭、黒人差別や女性蔑視の時代。
アメリカ南部の片田舎で育った黒人の姉妹が花畑で無邪気にじゃれ合う仲睦まじい描写から始まる冒頭。
しかし、父親に呼ばれ姿を現したのは、はち切れんばかりにお腹が大きくせり出した少女のシルエット。
衝撃的な出産シーンからの暗転。
おそらく黒人社会の中で当然のように横行して来たのであろう父親や男からの性的虐待。妻や子供たちへの暴力。
まさに女性の人権蔑視の時代を息を潜めるかのように生きてきた黒人女性セリーの半生を描いた衝撃作。
つらい日々の中で唯一の心の拠り所であった妹の存在。
後に心の支えとなる自由奔放に生きる黒人シンガーの夫の愛人との出会い。
従順で奴隷同然に扱ってきた妻に去られた最低の夫が退廃し堕落していく様は、でくのぼうとしか思われていなかったセリーの存在感を感じさせ小気味いい。
ただただ最低なだけだった夫が垣間見せた、姉妹の絆が呼び起こした奇跡のようなラストシーンが感動を呼びます。
かつて社会的に虐げられていた黒人社会の中にもまた存在していた女性差別や女性や弱者たちの現実についてものすごく考えさせられる作品でした。
若かりし日のウーピーゴールドバーグの、感情を抑えた演技の中にも見え隠れする小さな小さな愉楽を楽しむ表情が実に秀逸。