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キル・ビル Vol.2のMASHのレビュー・感想・評価

キル・ビル Vol.2(2004年製作の映画)
4.5
初めて観た時は圧倒的にVol.1の方が好きであった。派手で観ていて楽しいのはVol.1であるし、当時の僕にはVol.2は地味に思えて退屈に感じた。しかし、いざもう一度観てみると、この映画は単に色んな映画へのオマージュだけの映画ではないことが分かった。これはタランティーノ流の"愛"を描いた作品なのだ。Vol.1はアクション映画として素晴らしい作品であったが、Vol.2はよりドラマティックな作品に仕上がっている。タランティーノの作品の中でも最も感動的な作品であり、彼の作品の中でも僕のお気に入りの作品の一つである。

タランティーノの映画愛はVol.1同様に詰め込まれている。Vol.1は日本映画のオマージュで埋め尽くされていたが、今回のVol.2では香港カンフー映画やマカロニ・ウエスタン、そしてホラー映画までもが取り込まれており、よりごちゃ混ぜな作品となっている(もちろん良い意味で)。そして、意外なことにこれらの多くのオマージュにより「キル・ビル」という作品により深みが出ているのだ。Vol.1は良くも悪くも日本映画のみを対象としていたため、昔の日本映画のオマージュという段階で止まっていたが、今回はこのごちゃ混ぜ感により「キル・ビル」の世界観に厚みが出て、よりタランティーノのセンスを感じさせる。(ただ相変わらず元ネタが「少林虎鶴拳」とかコア過ぎるネタばかりでピンとこない部分が多い。もっと映画について勉強せねば!)

そして何よりこの映画で素晴らしいのはそのドラマ部分だ。タランティーノの曰くこの映画は一作目とは違い「ラブ・ストーリー」らしいが、まさしくその通りである。主人公とビルの間の"愛"、そして母親の子供への"愛"がそこには描かれている。この映画は愛を単純なものとして描いておらず、優しい面と恐ろしい面を同時に描いている。ビルとの関係性で愛の持つ恐ろしい面を描き、主人公の娘に対する思いで愛の持つ優しさを描く。その独特の世界観により気づきにくくはなっているものの、実は"愛"というものを深く描いた作品となっているのだ。

そして、それらのテーマ性を支えている圧倒的なタランティーノの魅力的な脚本。ある意味馬鹿げたシーンが多い作品ではあるが、その間に挟まれる会話シーンは実はものすごくよく出来ている。うまくは言えないが、彼特有のどうでもいいけど面白い会話というのとはまた違う独自の会話の魅力がある。ラスト30分の主人公とビルと会話のシーンはタランティーノの作品の中でも最も引き込まれる会話シーンだ。

ただ正直「結構カットされたんだなぁ」と思わざるを得ない部分もあった。特にビルというキャラは圧倒的なカリスマ性と異常性を兼ね備えたキャラであるにもかかわらず、キャラ描写が非常に少ないためややもったいない気がした。この出番の少なさでここまで魅力的になるのはこの役者とタランティーノの脚本のおかげだと思うが、どうせならもっと深く描いて欲しかった。

やはりVol.1の方がエンターテイメント性は高く、印象に強く残る作品ではある。Vol.1を観るような目線でVol.2を観るとやや物足りなく感じるだろう。ただ実はVol.1とはまた違う点でとても素晴らしい作品となっている。Vol.1は壮絶な復讐劇を描いた傑作アクションであり、そしてVol.2は愛の持つ狂気と優しさを描いた至高のラブ・ストーリーなのである。

2回目 4.5点
(2018年1月14日 Blu-ray)

1回目 3.5点
(2016年3月3日 DVD)
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