マリオン

ロッキー2のマリオンのネタバレレビュー・内容・結末

ロッキー2(1979年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

アポロ戦で負けはしたものの栄光と成功を勝ち取ったロッキーだが、だんだん生活が立ち行かなくなってしまい、アポロとの決着を着けるためのリマッチに挑む姿を描くロッキーシリーズ第2作。勝ち取ったかに見えた成功や栄光が、一転して更に暗い影を落とし込んでいく様は、前作にも似た切なさや不遇さを感じさせ、更なるトレーニングと試合へとなだれ込んでいく…前作の反転を描く忠実な続編だ。

物語は前作の直後から始まる。ロッキーは前作でのアポロ戦でどうしようもなかった人生や拭いきれなかった不遇な気持ちから解放されて、世間もまたアポロの猛攻撃を受けながらも立ち続けたロッキーの健闘を称え、CMのオファーがくるほど有名になった。そんな中でロッキーはエイドリアンと結婚、やがて妊娠も発覚する。エイドリアンとの結婚、妊娠、富と名声を手に入れたロッキーはボクシングから身を引き、車や高級なジュエリー、腕時計、マイホームなど、今までしてやれなかった幸せな生活を営み始める。ポーリーもまた、ロッキーから受け継いだガッツォの取り立て業が好調で、皆がそれぞれ輝き始めた自分の人生を謳歌し始めていた。

だがそんな幸せな日々は長くは続かなかった。CMのオファーはセリフを読むことが出来ないロッキーによって契約が取り消されてしまう。やがて獲得したファイトマネーも底を尽きはじめて、かつてポーリーが働いていた精肉工場に就職するも不況による人員削減によって解雇されてしまう。行き場のなくなったロッキーはまたボクシングに復帰しようとするものの、ミッキーから断固反対されてかつて所属していたミッキーのジムで働きはじめ、エイドリアンも家計を支えるべくかつて働いていたペットショップのパートを始める。前作でようやく幸せを掴んだはずなのに、再び困窮した生活に陥っていくという展開は、落差もあってとてつもない切なさをもたらす。

一方「前回の試合で負けたのはチャンピオンだ」という世間の声に苛立ちを覚えていたアポロは、自身の強さを世に知らしめるためにボクシングから身を引いたロッキーとの再試合を企画し、ロッキーをリングに戻すために、バッシングを繰り返す。そんなアポロに憤慨したロッキーとミッキーは再び復帰するために二人三脚でトレーニングを始めるが、今度はロッキーの身を心配するエイドリアンからは反対されてしまい、妊娠した彼女のこともあってかトレーニングに身が入らない。そんな中、エイドリアンは心労と過労で倒れてしまい、無事に出産はしたものの昏睡状態に陥ってしまう。手厚い看病もあってエイドリアンは目を覚ますものの、これ以上負担をかけさせないとロッキーはボクシングの道を諦めようとする。だがエイドリアンはそんな彼の生き様=ボクシングに生きる姿に正直になってほしいという想いを込めて「勝ってほしい」とロッキーに告げる。

そんなエイドリアンの一言で覚醒したロッキーは前作以上のトレーニングを重ねる。前作での試合の影響で目にハンデを抱えていたロッキーは、アポロのスピードと猛攻撃に対抗するべく、すばしっこい鶏を捕まえるなどスピードを上げる訓練と、今まで以上に打たれ強くなるために頑丈な体を作り上げる。そして試合ではアポロと壮絶な死闘を繰り広げる。前作でも壮絶な戦いだったが、今作はそれを軽く超えてしまうほどに双方ともにひたすらパンチを打ち続け、トレーナー達の怒号は響き渡り、会場は前作以上の熱気に包まれる。やまないパンチの応酬は続き、最終ラウンドでアポロとロッキーは同時にダウンしてしまう。突きつけられる10カウントでアポロはとうとう力尽き、ロッキーは必死の思いでリングに立ち上がる…ついにロッキーは王者アポロを倒して、新たなチャンピオンとしての地位を獲得するのだった。ストーリーは前作の展開とほぼ変わらないように見えるが、前作で勝ち得た栄光からの転落を経て、本当の栄光を掴むという展開は、前作のシンデレラストーリーへのカウンターとしての面白さがあると感じるし、栄光から転落して全てを失っても残るボクサーとしての自分に意地でも戻ってくるロッキーの男気がきちんと描かれ、2作目にしてロッキーというキャラクターが完成したと言ってもいいかもしれない。またそんなロッキーを心配しつつも受け入れるエイドリアンはとても強い人間のように思えた。

そして演出や描写ににおいて前作よりもパワーアップしている。例えばどんどん生活が立ち行かなくなっていき悲壮感が漂ってくるロッキー達の生活描写も丁寧に描き出しているし、守るべきものが少しずつ増えてきた男の苦悩や葛藤が更に物語を深くする。またトレーニングの描写は前作以上の過酷さが滲み出ていて、ロッキーの肉体も更に強く見える。前作が「やれるだけのことを精一杯やるトレーニング描写」ならば今作は「勝つために限界まで追い込み続けるトレーニング描写」だと思う。そして試合シーンも、1ラウンド目からロッキーもアポロもガチンコで挑み、パンチの応酬がずっと続くので前作以上に熾烈な戦いを見せてくれる。もちろんビル・コンティの切ないピアノのメロディが印象的なスコアやお馴染みのロッキーのテーマも相変わらず素晴らしいし、ランニングの場面や映画のはじまり方などお決まりもきちんと健在だ。

ただ監督がジョン・G・アヴィルドセンからシルヴェスター・スタローンになったことで、過剰な部分が多く感じたのはマイナスポイントかもしれない。特にその過剰さがよく表れているのが、シリーズでお馴染みとなったランニングシーンとロッキー・ステップだ。ロッキーがいつものようにランニングをしていると街の子供達がロッキーを追いかけてくるのだが、ロッキー・ステップにたどり着く頃には大通りの道幅一杯の子供達が行列を作りながら追いかけてくるのだ。ロッキーを支えるフィラデルフィアの子供達が追いかけてくるという演出自体は悪くないが、明らかに度を越したサービス精神がこのような演出の過剰さに拍車をかけてしまっている。その過剰さが全て裏目に出ているわけではないものの、どうしても悪目立ちしてしまうのも事実だ。今作を見て前作ではメロティックになりがちなシーンはちょっとした会話の積み重ねでドラマを深く描き、時には不器用さがとても情緒溢れるシーンになるなジョン・G・アヴィルドセンの地味だけど職人技のような演出によって味わい深いものになっていたなと改めて感じた。また前作の展開をなぞっていることは分かるのだが新鮮味があまり感じられなかったし、生活の切実さや心の余裕のなさも前作より目減りして見えたのも少し腑に落ちない点だ。

役者陣では、前作よりもたくましい肉体を作り上げ、栄光からの転落という悲壮感を漂わせるのが上手なロッキー役のシルヴェスター・スタローンや、前作であまり発揮できなかった本気を見せるべく本気のボクシングを見せつけ、軽快な口ぶりで相手をまくし上げるアポロ役のカール・ウェザースの演技がとても印象的だった。もちろんエイドリアン役のタリア・シャイアが魅せる健気な強さや、ムカつく奴だけど憎めないポーリー役のバート・ヤング、口は悪いけど良き師匠であり父であるかのようなたくましさを見せつけるミッキー役のバーチェス・メレディスなどお馴染みの役者陣も素晴らしいことは言うまでもない。

栄光からの転落に差し掛かった人生でそれでも俺にはボクシングしかないと言い切れるロッキーという男の本質がしっかり描かれ、因縁のアポロとの壮絶な戦いが目に焼き付く…前作のハッピーエンドに疑問を呈して新たなハッピーエンドを作り上げる正統派な続編と言えるだろう。

~栄光からの没落を経て、ロッキーは再び戦いを始める~「ロッキー2」ネタバレレビューhttp://marion-eigazuke.hatenablog.com/entry/2015/11/27/203026