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赤い橋の下のぬるい水の教授のレビュー・感想・評価

赤い橋の下のぬるい水(2001年製作の映画)
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今村昌平作品の「人との関わり方」の描き方が好きだ。どこか閉塞的で、開かれた一般社会とは隔絶された集落ののようなコミュニティの人々のグチャグチャで変に親密なコミュニケーション。
普通に他人と他人が当たり前のように会話をしてる。「うなぎ」でも「黒い雨!でもそうだった。そこに前戯のような回りくどさがない。

で。
長編劇映画としては遺作になってしまった本作は。ラブストーリーであり、21世紀初頭の日本のファンタジーであり、映画的虚構の中に幾重にも感情を書きなぐったエンターテイメント作品という出来映え。

性愛から始まる90年代的な自分探しというか。大人になることができなかった大人たちの切ない現実を役所広司が体現する。そしてこういうのはとっても合う。

清水美沙は近年の大林作品でも艶っぽさを発揮しまくっていたが、その艶っぽさの原点は「うなぎ」や本作のような今村作品にある気がして観てみたら、やはり本作でも色っぽくて、ちっとも下品じゃなかった。

他にも夏八木勲親子のバイオレンスだったりトッポイ感じの小島聖であったり。
役者たちのエネルギーが爆発している。

日本映画不在、というのは、このような作品のエネルギーがどうしても再現できないところにあるからだと思う。
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