カツマ

街のあかりのカツマのレビュー・感想・評価

街のあかり(2006年製作の映画)
3.8
女々しい男の報われない話だからこそ最後の2秒間は素敵なシーンだった。
カウリスマキ的な無表情、不条理、そしてロマンチックがシクシクと啜り泣くように繰り返される。主人公の表情は能面のようなのに、いつも泣いているようにも見えた。何をやっても上手くいかない、そんな人も世の中にはいるけれど、きっと誰かが見てくれている。とても切なくて、ちょっとだけ暖かい。少しの温もりとノスタルジックな音楽をスパイスに、街の明かりの片隅でひっそりと咲く小さなお話です。

夜勤の警備員コイスティネンは友達も恋人もいない寂しい独り暮らし。彼の日課はバーの片隅でちんまりとお酒を飲むか、ホットドッグの屋台で働く女性と立ち話をするくらいのものだった。だが、1人お酒を引っ掛ける彼の前に魅惑的な女性が現れる。コイスティネンはたちまち彼女に惚れ込むも、実はそれには裏があった。コイスティネンは彼女の行動に違和感を抱きつつも、一途に彼女を想い続けるのだが・・。

この映画は『浮き雲』『過去のない男』と合わせてカウリスマキ敗者三部作の最終章。確かにこの物語の主人公は間違いなく色々な要素において惨敗している。だが、そんな孤独なダメ男にスポットライトを当てる優しい映画でもある。コイスティネンの無力さは果てしなく、やることは全て裏目に出るけれど、最後の最後まで見てほしい映画です。
フィンランドらしいサラッとしたオシャレな色彩、インテリアも素敵で、素朴な北欧風景が段々愛おしくなってくる作品でした。
カツマ

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