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ナイト・オン・ザ・プラネットのTSのレビュー・感想・評価

4.1
【5つのタクシー内の物語】86点
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監督:ジム・ジャームッシュ
製作国:アメリカ
ジャンル:ドラマ・コメディ
収録時間:129分
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『パルプ・フィクション』級に好きなオムニバス映画かもしれません。二時間、タクシーの中で会話が続くだけ。オムニバスなので全部で5つの話があります。ロサンゼルス、ニューヨーク、パリ、ローマ、ヘルシンキ。世界中となると語弊がありますが、同じ時刻においてそれぞれの国のタクシー内ではどのような事が繰り広げられてるのか。そのあたりを淡々と、しかしお洒落に描いた良作であります。

好みのストーリーは人それぞれかと思います。個人的にはニューヨークとパリの章が特に響きました。面白いことに、同じタクシー内なのに感じ方がそれぞれ全く違います。しかし日本と比べるとやはり決定的に違うところがいくつもあります。特にドライバーの大らかな態度が見ていて興味深いです。日本のドライバーがタバコなんて吸ったら首が飛ぶでしょうし、ガムを噛んで自分の席にそれをつけるなんて言語道断。でもこれくらい大らかな方が自分を隠していない感じで清々しいです。日本はサービスやマナーが良すぎるんですね。

適当にドライバーをしてるだけと思いきや、何気に夢や目標を持ってる女性、ニューヨークに移住してきたが運転の仕方もよくわかっていない男性、ロベルト・ベニーニ演じる呑気な男性など様々なドライバーが登場します。全員印象に残るキャラですが、乗客も負けていません。特にニューヨークのヨーヨーという男は独特で良かったですね。クスッと笑えるコメディ要素もあると思いきや、何気に黒人差別や障がい者問題なども扱っています。

かように様々な物語が散逸している映画でして、苦手な人はとことん苦手かもしれない。でも、これがやはり人間の生活なのだよと静かに教えてくれた映画だと思いました。ドライバーにも乗客にもそれぞれ事情がある。わずか十数分の中での何気ない会話、そして目的地に着けば降りる乗客。この儚さというか淡さが良いと思いました。ロサンゼルスは夜中が舞台なので人気はありますが、ローマやヘルシンキは早朝手前が舞台なのでドライバーと乗客以外人が出てきません。自分が今こうしてる間にも他の人は活動している。まさに眠らない星、地球というのを改めて実感させられました。

雰囲気的に深夜に見ることをオススメします。淡々としてるので眠たくなってしまうかもしれませんが。それにしても原題がナイトオンアースなのになぜにプラネットにしてしまうのでしょう。プラネットとしてしまうとかなりSF感が出てしまうと思うのですが…
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